堕天使系兄の攻略方法。
プロローグ




5月───。


桜の花びらが舞う季節を過ぎ、校庭は新緑色が広がっている。

正直この季節の方が好きだった。
風が涼しいし、花粉も落ち着いていて。



「ちょっと柚!次あんた当てられるよ!」


「んー……、ちょっと無理…」



窓際4列目の席は言わずもがな、最高だ。

開けられた窓からカーテンが揺れ、そんなものを眺めるように机に突っ伏してうとうとと夢と現実を行ったり来たり。

小学校からの幼馴染である遥はヒソヒソ起こしてくるけど…。


4限目、あと10分でお昼休み前のチャイムが鳴る。



「怒られても庇ってあげないからね…!」



いてっ。

適当にプリントを丸めたボールが投げられた。



「七瀬。12ページ1行目、読んでくれ」


「あっ、はいっ…!」



けれど現代文担当の石田から指名されたのは、私ではなく遥だった。

今日はついてるなぁ。
平和だなぁ…と思ったのも束の間。


キーーンコーーンカーーンコーーン。



「きりーつ、」



ガタッ!!!

号令の合図と同じタイミング、私は誰よりも早く席を立った。


4限で寝ていた理由は、決して睡魔に襲われていたからではないのだ。



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