堕天使系兄の攻略方法。
「俺のこと…可哀想だと思った?」
ブランコは寄せては返す波のようだった。
しかし柚は止めようとせず、空を見上げて向かい来る風を受け止める。
なに聞いてんだろ俺。
こいつに次は何を言って欲しいんだろう。
「じゃあお兄ちゃんは?…私の誕生日のこと聞いたとき、可哀想だと思った?」
俺達はきっと、似ている。
似ているのに俺とお前は全然違うんだよ。
幼い頃は似たような涙を流したかもしれない。
どうしようもない葛藤、どうしようもない八つ当たりの仕方すら分からない中で。
「思わないよ。…だってお前には今、家族が居るでしょ」
過去はどうにもならない。
過ぎ去ったことだ。
そのときは確かに胸が抉られる程に苦しいかもしれないけど、でもそんなものが無かったらこうして俺達は出会えてない。
───家族になれていなかった。
そして今日のようなことも、俺は味わえなかっただろう。
あんなふうに言ってくれる女の子に出会えなかった。
「こんなこと言うのは最低かもしれないけど…お前の本当のお母さんも俺の父さんも、そういう形で俺達を出会わせてくれたんだよ」