堕天使系兄の攻略方法。
「お兄ちゃん、どうしよう、…目閉じるとあの人が出てきちゃう」
「じゃあ俺を見てればいい」
そのまま私を包み込むように抱き締めてくれる。
それも子供扱いなのか、それとも兄として慰めようとしてくれているのか。
それでも嫌じゃない。
この人だけは、嫌じゃない。
「…電気、消そっか」
ベッド脇に置いてあるリモコンをピッと鳴らすと、証明は落とされた。
暗闇の中でその胸に顔を埋める。
ふわっと兄の香りをいっぱいに吸い込んで、全てをこの人で塗り替えてしまえたらいいのに。
「柚、俺のこと見える?」
「…うん」
少し目が慣れてきたみたい。
カーテンをしていても、夜の暗闇はどうしてか漏れる明かりから静けさと彼の顔を映してくれた。
そんなものが心を少しだけ落ち着けてくれる。
「駄目だ、俺いますっごい腹立ってて」
「…うん、」
「あいつを殺しておけば良かったって思ってる」
「駄目だよ、…だってそしたらお兄ちゃんと一緒に居れなくなっちゃうもん」
そこまで怒ってくれるだけですっごく嬉しい。
それは兄だからじゃなくて、私は今も必死だ。
…この心臓の音を知られないように。