堕天使系兄の攻略方法。
「ねぇ柚、」
顔を上げてみる。
「誕生日の日にさ、…“こんなに楽しい誕生日は初めて”って俺に言ってたの覚えてる?」
「…うん」
覚えてる。
そのあと、「生まれてきてくれてありがとう」って言ってくれたの。
今みたいに抱きしめられながら。
「柚の初めて、…ぜんぶ俺が貰っていい?」
もう16年は生きてるから、初めてという経験の方が少ないような気がする。
私がまだ経験していないことはなんだろう。
私がまだ知らないことはなんだろう。
いつもならそう言われたら、オーバーなくらいにリアクションする私なのに。
今日はこの雰囲気がそうはさせてくれなかった。
「それは…お兄ちゃんだから…?」
「知ってる?柚、…俺がそう言うときってほとんどが口実でしかないから」
口実…?なんの……?
あ、どうしよう眠くなってきた。
この腕の中なら眠れそうだ。
「わ…っ、」
夢かな、夢じゃないのかな。
ふわふわした感覚の中、首筋にピリッと痛みが走った。
「おにーちゃん…?」
柔らかい感触が触れたと思えば、吸血鬼のようにじゅっと吸われる。
そしてゆっくり離れて。