堕天使系兄の攻略方法。
「あっ、ごめんねお兄ちゃん」
脱衣場の扉は、開けたときと同じスピードで何変わらずに閉めた。
まさか着替え途中の兄と出くわすとは。
けれど例え異性の肌を見たところで別に何も思わない。
家族とは、兄妹とはきっとこういうものだ。
「それ私にも一口ちょーだいっ」
飲みかけのペットボトルを後ろからひょいっと躊躇いなく奪って口つける。
間接キスとやらだって、“間接キス”と思わなければそうにはならない。
というか兄妹間はそういう概念すら無いのが普通だ。
「…へぇ」
その不敵な笑みに気付かないふりをして妹を演じた。
だって無かったことにしたんだから。
この先もずっとずっと兄妹として生きていかなくちゃならないのだから。
「お兄ちゃん、人の部屋でくつろぐのはいいけど私そろそろ寝たい」
今はこうして慣れなくとも、あと5年経てば当たり前になってくれるはず。
……あぁでも、来年にはお兄ちゃんはここから出て行くんだっけ。
「お前の部屋、風通しいいね。俺も今日ここで寝ようかな」
「…え。だ、駄目だよっ!」
「なんで駄目なの?俺達兄妹だろ?」