堕天使系兄の攻略方法。
「───柚…?」
そんなときだった。
若くもない、年配でもない。
そんな声に名前を呼ばれて。
振り返った先、見たことない女性がぎこちなく近付いてくる。
「…どちら様で………お、…かあさん……?」
不思議とそう言っていた。
確信は出来ない。
だって4歳のときから会っていないんだから。
それに今は少し天然で優しい料理上手な母がいる。
「柚でしょう…?……大きく、なったね」
大きくなったねって……。
今までどこに居たの、どうしてあのとき家を出て行ったの。
あのあと色々大変だったんだよ。
お父さんは私の為に定時で帰れる仕事に変えたりして。
私は保育園で『どうして柚ちゃんのお母さんは迎えに来ないの?』なんて友達に言われたりして。
「たまたまこの町に用があって、そしたら柚を見かけて…。一目見て分かったわ」
「…お母さん…、元気…?」
「…元気よ。柚も元気そうで良かった」
なにそれ。
元気って、なにが。
どこも元気じゃないよ。
だって私の時間は、お母さんが出て行ったあの日からずっとずっと止まってた。