堕天使系兄の攻略方法。
本当はこんなところでまた会えなくなるのが嫌だった。
せっかく会えた母親に「元気だよ」って、それだけ伝えてバイバイだなんて。
「…ありがとうね」
母は受け取って、そして私の横を見つめた。
「柚の学校のお友達かな…?」
「いえ、俺は───」
「そ、そうだよ友達なの!3年生の先輩で、いつもお世話になってるんだっ」
言えるわけがない。
新しい私の家族ですって。
今は新しいお母さんがいて、この人が兄でお父さんも毎日笑ってます、なんて。
実の母親にそんなこと言えるわけがない。
「…そう、これからも柚と仲良くしてあげてね」
「…はい」
微笑みかけると、母は去って行った。
その背中が見えなくなっても私はじっと見つめる。
「柚は父さん似だね」
「…そうかな、お母さんには似てない?」
「そうだったらもっと大人しい子に育ってたはずだからさ」
わかってるよ。
この人は空気を和らげようと冗談を言ってくれていること。
それでも「母親には似てない」と言われてるみたいで、どこか腹が立った。
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