堕天使系兄の攻略方法。




本当はこんなところでまた会えなくなるのが嫌だった。

せっかく会えた母親に「元気だよ」って、それだけ伝えてバイバイだなんて。



「…ありがとうね」



母は受け取って、そして私の横を見つめた。



「柚の学校のお友達かな…?」


「いえ、俺は───」


「そ、そうだよ友達なの!3年生の先輩で、いつもお世話になってるんだっ」



言えるわけがない。

新しい私の家族ですって。

今は新しいお母さんがいて、この人が兄でお父さんも毎日笑ってます、なんて。


実の母親にそんなこと言えるわけがない。



「…そう、これからも柚と仲良くしてあげてね」


「…はい」



微笑みかけると、母は去って行った。

その背中が見えなくなっても私はじっと見つめる。



「柚は父さん似だね」


「…そうかな、お母さんには似てない?」


「そうだったらもっと大人しい子に育ってたはずだからさ」



わかってるよ。

この人は空気を和らげようと冗談を言ってくれていること。


それでも「母親には似てない」と言われてるみたいで、どこか腹が立った。








< 176 / 244 >

この作品をシェア

pagetop