堕天使系兄の攻略方法。




柚だけは上手くいかない。

こいつだけは俺の予想もしていないところを突いてくる。


いつだって斜め上から来るくせに、正面突破だ。



「…おかえり」



病院から出てきたそいつは俯くように俺の前に立った。

ジュースを差し出すと静かに受け取ってくれる。



「…ありがとう」


「俺の飲みかけだけど」


「……さすがお兄ちゃん」



なにがあったのかは聞かない。

どんな話をしてきたのかも、聞きたくない。


お前はこれからもいつも通り俺の家族として過ごすんでしょ?



「…私、…お母さんと暮らす」


「駄目」


「…これはもう私の中で決定事項だよ」


「うん、駄目」



その手を引いて夜道を歩く。


家とは少し反対方向へ向かったのは、まだ2人きりで居たかったから。

兄妹に戻りたくなかったから。



「…過労で倒れたんだって。…ろくな睡眠も食事も取ってないから」



大体は想像がつく。

あの笑顔は今にも倒れてしまいそうだったから。


だから俺だって「どうして柚の誕生日に出て行ったんですか」って、無責任に責められなかった。



< 183 / 244 >

この作品をシェア

pagetop