堕天使系兄の攻略方法。
小さなアパートの端っこ。
2Kの間取りの片部屋には小ぶりなソファーにテーブル、テレビ。
リビングのように使って、奥の部屋はベッドルームになっていた。
それだけで彼女がずっと一人暮らしをしていた様子が伺える。
「お母さん昔から料理が上手じゃなくてね。…でも柚はいつも美味しいって言ってくれたっけ」
「…そうなの?でも覚えてるよ、カレーがね、水っぽかったの」
「ふふ、お父さんにも我慢して食べてもらってたわ」
だいぶ顔色は戻ったみたいだ。
それでもやっぱり栄養が足りてないのか、サプリメントや薬が棚にはたくさん入っている。
「…お母さんは私達のこと、覚えてるの…?」
私は忘れたときなんか無かった。
小さな記憶だけど、いつも優しく笑っていた人ということだけは今までもずっとずっと覚えていた。