堕天使系兄の攻略方法。
「真崎さん、ラスト曲紹介よろしく」
曲紹介って、何をすればいいんだろう…。
心臓はドキドキバクバクとうるさい中で落ちついて紹介出来るかも不安だ。
「さ、最後の曲は皆さんも知っているかと思います。ぜひ口ずさんでみてください…」
バチッと目があった。
「頑張れ」なんて、口を動かす羽柴 湊。
体育祭のときはそんなこと言ってくれなかったのに、どうして離れてから、あまり関わらなくなってから優しくするんだろう。
「…大切な人に、捧げます」
どうしてそんなことを言ったのか、考えるよりも前に前奏が始まった。
ゆったりしたコードの中に力強さもあって、ドラムが優しくリズムを取り出す。
『好きな人を思い浮かべて!この歌の主人公になりきるの!!』
なりきってない。
この歌が私の伝えられない気持ちを代弁してくれているようだった。
この気持ちは私のものだ。
「───…ありがとう、ございました」
歌い終わったとき、自然と拍手が体育館に響いた。
そして私の頬に伝う涙にもらい泣きをしたのか、涙ぐむ生徒もたくさん居て。
大きな拍手の中、私はステージ脇に捌けた。
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