堕天使系兄の攻略方法。
「じ、時間は余裕だよね…?」
「時間はね」
4限が終わってから1分以内に買ってくるという地獄のルールを作ったのはこの男だ。
爽やかな笑みを浮かべて、無造作に靡かせる黒髪。
左サイドは若干耳にかけられているからこそ、覗く耳へ視線が奪われる。
そしてしっかり絞められたネクタイ。
見るからに優等生。
見るからに頭の良さそうな見た目。
「わっ、え、ちょっ」
ずんずんと迫って来るこの3年生の男子生徒は言わずもがな、私の兄だ。
けれどまだ兄妹となって1ヶ月程しか経っていない。
「───柚、」
「っ…」
整った顔が目の前。
囲われるように両腕が伸ばされた。
これが机ドンってやつですか……?
「これ、いつもの味じゃないんだけど?」
「……へ?」
ひょいっと、置かれていた野菜ジュースを逆に差し出された。
……これ、トマト風味だ。
しまった、やってしまった。
この人は甘いマンゴー風味の野菜ジュースしか飲まないという偏食なところがあるのだ。
「はい、お仕置き」
「えっ、ちょっと待っ───…っ!」
「待て?誰がお兄ちゃんに指図していいって言った?」
そうして悪魔は悪戯に笑った───…。