堕天使系兄の攻略方法。




『父さん、試合絶対勝ってね!』


『あぁ!湊に格好悪いところは見せられないからな!』



まさかあんな場所でまた父さんに会えるなんて思ってなかった。

あんな小さな画面の中だったけど、その名前が誰かに呼ばれるところをもう1度聞けるなんて。



「ん…、…おにーちゃん、」



微かな声、すぐに俺は手を止めて振り返る。



「どうしたの柚。なにかいる?」



ゆっくりと瞼を開いた柚は、ふにゃりと笑う。

少しズレた冷えピタ、火照った顔、そんなものすら似合ってしまうような笑顔で。



「あのね、…ありがとう……おにーちゃん…」



そのまま夢の中へと入っていく。


いつも意地悪し過ぎていることを少しだけ反省したくなった。

もうちょっと優しくしてあげたい、なんて思った。

こんなにも素直で純粋で馬鹿な妹だから。



「…やわらか」



ふにっと、その頬を優しく引っ張ってみればお餅みたいだった。

このまま落ちちゃうんじゃないのこれ。



「精神年齢は4歳…で、止まってるのかな」



だから俺の手を母親のものとでも思ってるんだろう。

すうすうと眠る顔はいつも以上に幼く見えてしまう。



「…って、俺いつからこんなにシスコンになったんだろ」



ぎゅっと手を握れば、微かに握り返してくれたような気がして。

それなのに俺が握る力よりずっとずっと強くも感じた。



「…別にどこにも行かないって。だってこんなにも馬鹿で甘えん坊な可愛い妹が居るし」



これは兄としてだ、……たぶん。



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