堕天使系兄の攻略方法。
「柚!今だ!踏み込め…!!そんなヤワなパスでどーするっ!!!サーブが弱すぎる!!」
まるで司令塔。
よっちんの声が響くから、他クラスの生徒までもが私に注目する。
「あいつ下手じゃね?」「あんなのがセンターかよ、終わってんな」なんて声が飛び交う中。
「ナイスフォロー遥!!」
先程から点数を決めてゆく遥は、運動神経抜群だからこそセッターとして良いパスを上げてくれる。
………しかし。
───スコッ。
「……ありゃ。へへっ、消えた魔球」
「なにが魔球だ!!あんたのミスだっての…!!なにやってんの柚…!!!タイム!ターイムっ!!」
綺麗に外して5回目だった。
ピピーーッとタイム音が鳴って、よっちんは私の首根っこを掴まえるようにしてコート内に入ってきた。
「あたしのバレー人生かかってんのよ…!いい?柚、次で絶対決めなさいよ…!?」
「…は、はい」
よっちんは中学からの同級生。
活発で優しくて面白い子だから私とすぐに打ち解けたけれど、バレーに関しては命を張っている。
どうにも試合で負けたことが1度も無いらしいのだ。
完全勝利を未だに掲げている、そんな子。
『下手くそ』
そして上を見れば、口パクでそう伝えてくる悪魔。
ふんっと意地を張って再びコート内へ。