堕天使系兄の攻略方法。
『冗談やめろって!お前は無いわ!お前だけはあり得ない!だって女に見てないし!』
それが玉砕だった。
いつもすぐ近くに居て、誰よりも距離が近いと思っていたから勝手に浮かれて。
中学1年生から募ってきた大切な大切な気持ちはそんなにも簡単に砕け散って。
でも恭平君はそのことをクラスメイトには話さないでいてくれて、そのあとも普通に接してくれたっけ。
「…ただいま」
「おかえり柚ちゃん。体育祭お疲れ様!バレー大活躍だったんだって?湊から聞いたわ!」
「…うん」
「あら、疲れちゃったかしら。お風呂に先入る?あまり無理せず今日はゆっくり休んでね」
あれ、私いつの間に家に帰れたんだっけ…。
ぼーっとし過ぎてて全然覚えてない。
そして最近になってお母さんには少しずつ敬語も取れていた。
「ありがとうお母さん」
リビングのソファーに座っていた兄と目が合ったけれど、スッと逸らしてしまったのは私。
またあとで謝っておこう。
お風呂入らなきゃ。
でもなんにもやる気が起きない。
本当なら、帰ったら一番にお母さんに体育祭での話をしたかったのに。
「柚、入るよ?」
コンコンとノックと同時に開けられたドア。
それ意味ないよお兄ちゃん…なんてツッコミすら出来なかった。
ベッドにうつ伏せのまま「どうしたの」と呟く。