堕天使系兄の攻略方法。




最悪な誕生日だと思った。
それはもう今までで一番の。

あんな話を聞いてしまったし、それを兄に聞かれたことが恥ずかしくて嫌だった。


それなのに私はその手に引かれて校舎を歩いていて、その人はずっと強く優しく握っていてくれて。



「ねぇどういうこと…?真崎さんって湊先輩と付き合ってたの…?」


「でもお兄ちゃんって言ってたよ?顔似てなくない…?」


「どっちにしろショック~」



とうとうバレてしまった。

あんなにも隠せ隠せと言われていたのに。


それでも俯いた前髪の隙間から見えた背中は堂々としていて、怒っているわけでも無さそうだった。

腕が離されないまま学校を抜け出して、そして辿り着いた場所は───…



「確か母さん今日夕方まで帰って来ないんだっけ」



見慣れた玄関。

お母さんは友達とショッピングをするって言ってた。

だから今は2人きりだ。



「柚、オレンジジュース飲む?」



返事しなきゃ。
ずっと落ち込んでちゃ駄目だ。

それなのにソファーに座らされたまま、一点を見つめることしか出来なくて。



「…行こう」



お盆を片手に、兄はまた私の手を掴んで階段を上がった。

そんな器用なこと出来るんだ、すごいなぁって、とんちんかんなことを考えてしまう。



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