堕天使系兄の攻略方法。
「柚、こっち向いて」
その優しさが今は嫌いだ。
この人は今まできっと振られたことがないから、また私のことをからかうつもりなのかな。
私にとっては淡い淡い初恋だとしても、第三者から見たら笑い物でしかなくて。
「お前、今日誕生日だよ?知ってた?」
ハッと顔を上げたとき、とても優しい顔をしている羽柴 湊。
どうしてそんなに優しい顔で見つめてるの?どうしていつもみたいに意地悪言わないの?
それは私が誕生日だから…?
「……忘れてた…」
だから焼きそばパンくれたんだ、だから時間が過ぎてもそこまで怒られなかったんだ。
風邪のときにあんなこと話しちゃったから、少なくとも気を遣われてしまった。
「へへ、忘れてた。16歳だって、全然そんな感じしない」
遥だけは私の事情を知っているから、彼女も「おめでとう」とは毎年のように言わなかった。
この日は私が嫌いな日だ。
いつも元気な真崎 柚がちょっとだけ静かな日。
それでも笑わなきゃ。
平気だよ、大丈夫だよって言わなきゃ。
「───おいで、柚」
ベッドの端に座った私へと、両手を広げてくる。
少し隙間の空いた距離感が私の気持ちを揺らがせてくる。