堕天使系兄の攻略方法。
今は誰も見てないから、今は父さんも母さんも居ない。
お兄ちゃんしか居ないよ───なんて。
そんなの知ってる。
「まぁ来ないなら俺から行くけど」
「え…、わっ…!」
グイっ、ポスンっ。
引かれた力は想像していたよりもずっと強いのに、腕を掴む力は優しかった。
倒れ込むようにその中に納まってしまう。
「…誕生日おめでとう」
何年ぶりだろう。
「おめでとう」なんて言われたの。
その言葉だけはあの日以来言ってはいけないと、暗黙の了承になっていて。
私の誕生日はめでたくない日に変わってしまって。
「俺ね、お前が喜ぶことたくさん考えたんだけど…全然知らないことだらけでさ」
背中に回された手は少し震えてる。
同じ石鹸の匂い、同じ柔軟剤の香り。
それなのに全然違うものに感じる。
「お前のお兄ちゃんなのに笑っちゃうよね。妹の好きなもの何ひとつ知らないなんて」
私もそうだったよ、私も同じだった。
それでもお兄ちゃんは喜んでくれた。
私と居ると楽しいって言ってくれた。
「…あ、…ありがとう、お兄ちゃん」
「俺まだ何にもしてないじゃん。なにか欲しいものないかなって…本当はさっき屋上でそれ聞こうとしてた」