堕天使系兄の攻略方法。
「生まれてきてくれて───…ありがとう」
パッと目を開いたとき、今まで見ていた景色とは180度違って見えて。
「黙って聞いてて」なんて相変わらず命令口調で言ってきたこの人らしさが、なんとも可愛く見えた。
少し顔を覗いてみれば拗ねたように「…なに」と言ってくる。
「…ううんっ!ありがとうお兄ちゃんっ」
思わずぎゅっと自分から抱きついた。
お父さんには悪いけれど、小さい頃泣いていた私を元気付けるように買って来てくれたおもちゃよりも嬉しい。
「あーーー…もう、あーーー」
「え、どうしたの…?」
「いや本当どうしたんだろうね、俺も分かんない」
なにかを紛らわせようとしてるのか、天井を見つめてとりあえず声を出す兄。
だから思わず身体を離そうとすれば許されるはずはなく。
ぎゅっと余計に引き寄せられては、「いま離れたら余計危ないよ」と言ってくる。
「…うん」
もう少しこうしていよう。
きっとこの人が優しいのも、今日だけの特別だろうから。
夢を見てるみたいだ。
今日は今までで一番の誕生日だった。