覚醒者3号-最終調査報告-
ボスはしばし黙考した後。

「研究中の『あれ』を投入したまえ」

「な…し、しかし」

俺は慌てた。

「研究班の話によると、『あれ』はまだ試作段階の未完成だと」

「別に3号達を仕留める訳じゃない…ここまで追い込めればいい」

「こ…こことは…」

まさかボスは…3号達をこの場所におびき寄せようというのか?

この機関の本部へと…。

「見てみたいじゃないか」

ボスはソファから立ち上がり、雷鳴轟く窓の外の夜景を眺めた。

「この強大な機関に盾突き、君ほどの優秀な人間をも苦戦させる覚醒者…小山田哲平…一度夕食でも同席してみたいものだ…」

「……!」

正気なのか、ボスは。

あんたが奴の前に現れたら、奴は真っ先にあんたを焼き殺しにかかるぞ…?

そこまで考えて、俺はふと我に返り、自嘲した。

そうだ…この男ならやりかねん。

その胆力があったからこそ、この男は『今の地位』に上り詰める事ができたのだから。

「…3号達が知ったらどう思うでしょうね…貴方が機関のボスである事を知ったら…」

「…ふふ」

振り向いたボスの顔を、稲光が照らし出した…。


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