覚醒者3号-最終調査報告-
第三章

マンホールから地下に侵入して、既に3時間は経過していた。

2キロほど進んだだろうか。

暗闇、迷路のような造り、加えて機関の連中の襲撃にも備えて警戒も必要な為、思うように進めない。

「……」

私の隣で、ななみちゃんがかすかに息を荒げているのがわかった。

我慢強い子だから決して弱音を吐かないけど、まだ幼い彼女にこの行軍は辛い筈だ。

「小山田君、少し休憩しない?このままじゃばてちゃうよ」

私の提案に。

「…敵の陣中真っ只中だ。それはできない」

振り向く事なく小山田君は返した。

…機関の事となると、彼は目の色を変える。

その為には多少の犠牲は止むを得ない、とでも言いたげに。

初めて私と出会った頃から比べると、本当に小山田君は変わった。

…もっとも、そうしてしまったのは機関の陰謀に巻き込んだ私にも責任がある。

彼を責める事はできないけれど。

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