シンクロニシティ
「ダメ!」

不意に、後ろで叫び声がして振り向いた。


スイが、息を切らしてそこにいた。

何で帰ったはずのスイがいるのか、と疑問に思ったけれどそんなこと考える余裕なんてなかった。

どうして僕はこんな重大なことに気がつかなかったのだろう。





命を助けた代償は、「命」に決まってるじゃないか。





―命を助けた代償として、お前の命を差し出せ。

心の中の声が確かに聞こえた。


「ハヤトくん、どうして…。」


ゆっくりと体が傾いていく。



本当は二人で生きたかった。一緒にこれから頑張ろうと思っていた。

君とそう、約束した。

でも僕は、君との約束を果たせそうにないみたいだ。


だからせめて、君だけでも。



「…君は、生きて。」

目の前の君に、そう言い残すと体が宙へと落ちていくのを感じた。


君の悲鳴が遠くで聞こえる。


―君は生きてね。ありがとう、死なないでくれて。


僕と同じようにして、飛び降りた君の最期の言葉。

君は、あのときどんな気持ちだったんだろう。死に、何を思ったのだろう。




…僕と、同じようにして?


「もしかして、君も―」


強い衝撃が僕を襲って、そこで僕の意識は永遠に無くなった。
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