地味で根暗で電信柱な私だけど、あったかくしてくれますか?
 さらに幾つか質問すると気が済んだのか姉はもう一つの目的でもあった本を購入して帰って行った。

 去り際に「ゆかちゃんを泣かせたら承知しないからね」と言っていたけれどそういうことはないと信じたい……信じていいよね?

 佐藤さんは姉がいなくなってから営業の仕事に戻った。よく考えてみると姉は佐藤さんのお仕事を邪魔していた訳で……私は妹として大変申し訳なくなってしまった。

 商談が終わっ手から私は改めて姉のことを詫びた。

「すみません。姉のせいでお時間とらせてしまいましたよね」
「いやいや、そんな気にしなくていいですよ」

 佐藤さんが爽やかスマイルで応じる。

 利工書の本棚が並ぶフロアの隅で私たちは話をしていた。お客さんはほとんどおらずレジからも見えない位置にいるので何だか密会をしているような気分になってくる。まあ、レジからの死角は防犯カメラがカバーしているんだけど。

 そういえば佐藤さんに告白されたときもこんなシチュエーションだったなぁ。

 ふと思い出すと心音がとくんと跳ねた。
 
 
 
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