地味で根暗で電信柱な私だけど、あったかくしてくれますか?
「あーうん、そうなんだけどさ」

 やや歯切れが悪そうに姉が付け足す。

「ほら、ゆかちゃんに彼氏ができたって聞いたもんだからさ。姉としては大事な妹が二十八歳になってようやく捕まえた男がどんな奴か気になる訳で……」

 理工書の版元であるあんぺあ出版の営業の佐藤さんと交際していることは姉に秘密にしていた。それなのになぜか彼女にばれている。

「ええっと、それ誰から聞いたの?」

 若干の目眩を覚えつつ質問すると姉はあっさりと明かしてくれた。

「技術評論書房の山田さん」

 わぁ、山田さん。

 何でまたよりにもよって姉さんに教えるかなぁ。

 というかちょい待って。

「あれ? 姉さんって児童書の担当だよね? 山田さんって理工書の版元の人だよ」
「うん知ってる。けどさ、あの人の結婚相手ってうちの店の子だし」
「……」

 世の中って狭い。

 てか、書店員と版元の営業の組み合わせって流行ってるのかな?
 
 
 
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