地味で根暗で電信柱な私だけど、あったかくしてくれますか?
「あ、えーと」

 いきなり姉に問われた佐藤さんが少し困ったように顔を引きつらせる。目で「この人誰ですか?」と訊いてきた。

 うん、そうだよね。

 その反応は正しいと思うよ。

 私は姉を紹介した。

「佐藤さん、姉のあおいです。ちょっと頭のネジ穴が潰れていますけど、害はないので安心してください」
「ひどっ、ゆかちゃんそれひどっ!」

 姉が抗議するも私のお耳はスルーである。

 てか、佐藤さんが姉さんに惚れないようにしなくちゃ。

 相手が私の姉だと判明すると佐藤さんが警戒を緩めた。表情を和らげて彼は清涼感たっぷりの声で姉の質問に答える。

「初めまして、あんぺあ出版の佐藤です。清川さんの一緒にいて楽しいところとか人の話をちゃんと聞いてくれるところとかがいいなって思いますよ。あ、でもまだまだ清川さんの知らない部分がありますからもっといいところを見つけていきたいですね」
「わぁ、何この人」

 姉が目をぱちぱちさせた。

「爽やかさを標準装備してる。あれなの? 乙女ゲームの登場人物なの?」
「……」

 姉さん、その例えはどうかと。
 
 
 
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