転生公女はバルコニー菜園に勤しむ
「休み時間も少ないことだし、パパッとやりますか」
鉢底石を詰めた後に、肥料入りの土の袋を逆さまにして鉢の半分まで投入する。スコップで土を少しかさ上げしてから、苗を優しく指で押さえて上下逆にし、ポットを外す。
元気な苗を鉢の中央に置いて、周りを土でかぶせていく。両手で苗をそっと押し込み、位置を固定させる。
最後に支柱を取り出し、土の中へズボッと差し込む。
「よし、こんなものかしら」
満足げに頷き、じょうろを傾けて水を注ぐ。土の色が変わり、心なしか、葉が嬉しげに揺れる。
「姫様。一体、これは何を始めるんですか?」
鉢や資材を運ぶのを手伝ってくれたミュゼはしきりに首を傾げており、シャーリィは立ち上がって腰に手を当てる。
「これは、今日から私の相棒になるの。そして、毎日の癒やしをくれるのよ」
「この葉っぱがですか?」
「そうよ。ゆくゆくは収穫して、美味しくいただくけどね」
「え、食べられるんですか? 観葉植物じゃないんですか!?」
驚愕の表情を浮かべる護衛に、人差し指を左右に振ってアピールをする。
「ふっふっふ。これはレファンヌ公国の救世主になるかもしれない存在なの。うまくいけば、採れたて野菜が収穫できるのよ」
「え、この作物が育たない黒の小国で野菜が……? そんな、まさかぁ」
護衛見習いだったころの癖が抜けきらないミュゼは、あり得ないと手を振る。
けれど、信じてもらえないのも無理はない。先人たちはあの手この手で畑を作ろうとしては失敗し、神に見放された土地として諦め、輸入に頼る道を選んだのだ。
(でも、他国の土で鉢植え栽培なら、魔木の影響もないはず!)
勘で適当に土をかぶせただけだが、姿形だけなら、前世のベランダ菜園と同じである。あとは水やりと肥料をこまめにすれば、美味しい実ができるはずだ。
(……ん? アークロイド殿下に用意してもらったのは、固形肥料のみだったような……)
用意してもらった園芸セットを一つ一つ確認し、シャーリィは嘆いた。
「やっぱり液肥がない! 追加でお願いしないと……!」
トマトは肥料食いだ。週に一回の液肥、月に一度の固形肥料が必要になる。まだポットから植え替えたばかりなので、すぐには必要ない。しかしながら、心の安寧のためにも、可及的速やかに液肥の用意せねばなるまい。
鉢底石を詰めた後に、肥料入りの土の袋を逆さまにして鉢の半分まで投入する。スコップで土を少しかさ上げしてから、苗を優しく指で押さえて上下逆にし、ポットを外す。
元気な苗を鉢の中央に置いて、周りを土でかぶせていく。両手で苗をそっと押し込み、位置を固定させる。
最後に支柱を取り出し、土の中へズボッと差し込む。
「よし、こんなものかしら」
満足げに頷き、じょうろを傾けて水を注ぐ。土の色が変わり、心なしか、葉が嬉しげに揺れる。
「姫様。一体、これは何を始めるんですか?」
鉢や資材を運ぶのを手伝ってくれたミュゼはしきりに首を傾げており、シャーリィは立ち上がって腰に手を当てる。
「これは、今日から私の相棒になるの。そして、毎日の癒やしをくれるのよ」
「この葉っぱがですか?」
「そうよ。ゆくゆくは収穫して、美味しくいただくけどね」
「え、食べられるんですか? 観葉植物じゃないんですか!?」
驚愕の表情を浮かべる護衛に、人差し指を左右に振ってアピールをする。
「ふっふっふ。これはレファンヌ公国の救世主になるかもしれない存在なの。うまくいけば、採れたて野菜が収穫できるのよ」
「え、この作物が育たない黒の小国で野菜が……? そんな、まさかぁ」
護衛見習いだったころの癖が抜けきらないミュゼは、あり得ないと手を振る。
けれど、信じてもらえないのも無理はない。先人たちはあの手この手で畑を作ろうとしては失敗し、神に見放された土地として諦め、輸入に頼る道を選んだのだ。
(でも、他国の土で鉢植え栽培なら、魔木の影響もないはず!)
勘で適当に土をかぶせただけだが、姿形だけなら、前世のベランダ菜園と同じである。あとは水やりと肥料をこまめにすれば、美味しい実ができるはずだ。
(……ん? アークロイド殿下に用意してもらったのは、固形肥料のみだったような……)
用意してもらった園芸セットを一つ一つ確認し、シャーリィは嘆いた。
「やっぱり液肥がない! 追加でお願いしないと……!」
トマトは肥料食いだ。週に一回の液肥、月に一度の固形肥料が必要になる。まだポットから植え替えたばかりなので、すぐには必要ない。しかしながら、心の安寧のためにも、可及的速やかに液肥の用意せねばなるまい。