転生公女はバルコニー菜園に勤しむ
 バルコニーで栽培中のミニトマトはついに赤く色づいた。
 もうじき、初めての収穫だ。前世では失敗したが、今世では同じ轍は踏まない。

(トマトを収穫するのは熟してから!)

 心の中で前世の教訓を唱えながら、シャーリィは首をひねった。

「でも、どこで熟しているかを判断すればいいのかしら……」

 ミニトマトをつつくが、当然返事があるわけではない。野菜の栽培経験なんて、一度しかない。頼みの綱は前世の友人の知恵だが、異世界ではこのSOSは届かないだろう。
 今、頼れるのは自分だけだ。

(うーん。みかんやバナナは熟すと、軟らかくなるわよね。ということは)

 野菜にも同じことが言えるのではないだろうか。試しにミニトマトを手でつまみ、その硬さを確かめる。

(……まだ硬い? これがもう少し軟らかくなったら、熟した証拠ってことかしら)

 どのくらい軟らかくなったら食べ頃かはわからないが、毎日確かめていれば、少しは傾向がつかめるかもしれない。
 夢が叶う日はもう間近だ。期待は否応なしに膨らんだ。
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