【新説】犬鳴村
 私服の刑事はおおよそ定年前と思われる年配の刑事でクリーニングに出しているとは到底思えないヨレヨレっとしたグレーの背広に濃い緑色のジャンバーを羽織(はお)っていた。


どこか面倒臭そうに見えるのは気のせいだろうか。薄くなった頭髪を右手で掻きながらその女性に話しかけた。


「どげんされましたか?」

「どげんされましたじゃなかです!主人が…主人が…一昨日の夜から戻らんとですよ!何か事件とか…なかですか?」と受付のカウンターを両手で叩きながら食ってかかった。


その年配の刑事は
「おい!村上!ちょっとこっち来い。」
と近くにいた30前くらいの若い警察官を手招きした。


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