もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「ネネちゃんの村で、木枯らし病の人が出たんだってっ!!昨日から野菜の納品に来なかったから、ギルドへ依頼して村へ行って貰ったら、もう村で何人もの人が倒れているって!!」
「ええっ!ネネちゃんは大丈夫なのっ!?」
ネネちゃんの住む村はこの街から一番近い農村で、作った農作物はこの街へ持ち込まれる。だから村のほとんどの人がこの街に出入りしていたと考えれば、木枯らし病が流行ってしまったのも頷ける。
そうなると、他のこの街の周辺の村にも木枯らし病が感染している可能性が高いということだ。
ああっ!なんで私、気が付かなかったのっ!この街のことしか考えていなかったっ!
「頼んだギルドの人は、大慌てで戻って来たから、ネネちゃんのことは確認していないんだって!ねえ、どうしよう、ルリィちゃん!」
「どうしようって、どうしようっ!ねえ、おばあさん、ネネちゃんの村がっ!!」
慌てておばあさんのいる調合室へと駆け込むと、一昨日のようにおばあさんは鞄に薬を詰め込んでいた。
「聞こえていたよ。あそこの村がやられたんじゃ、この街も食料がなくなっちまうからね。いいかい。私が一緒に行くから、ルリィだけ先に行こうとするんじゃないよ。今から薬師ギルドへ声を掛けてくるから、少しだけ待っているんだよ!」
「おばあさんが一緒に行ってくれるの?ありがとう、おばあさんっ!アイリちゃん、私、おばあさんと一緒に村に行って来るから、ネネちゃんのことも確かめて来るよ!」
ホッと安心しつつ、店へ引き返してアイリちゃんに声を掛けると。
「ありがとう、ルリィちゃん。お願いね!……ごめんね、私は何もできないから」
「アイリちゃん……。私はアイリちゃんが元気でいてくれるだけでうれしいよ。アイリちゃんは、宿でこれ以上患者さんを増やさないように、手洗いうがいや口の覆いをするように呼び掛けてみてね」
「……うんっ!私がやってたら咳が出なくなったって言ってみる。ルリィちゃんも、気を付けてね!」
ぎゅっと手を結び、それでも笑顔でそう言ってくれたアイリちゃんに、私も笑顔で「行ってくるね!」と言った。
私が予め木枯らし病の薬の薬草を用意したのは、アイリちゃんが咳をしていたからで、アイリちゃんに元気でいて欲しくて始めたことなのだから。
調合室へ戻って作ったばかりの咳止めなどの薬を鞄へ入れ、二階の私の泊まっている部屋へ行き外套をはおって荷物を纏めるとすぐに階下へ駆け下りた。
「ルリィ。大丈夫だ。木枯らし病は、何年かに一度は流行るんだ。だからある程度は皆慣れている」
「そうですよね。大丈夫、ですよね……」
落ち着きなく動き回る私をなだめるように、ゆっくりと頭を撫でながら繰り返し大丈夫だと言ってくれたヴィクトルさんに、ぎゅっと胸元のセフィーの枝を握りしめて何とか微笑むと、丁度戻って来たおばあさんに促されて三人で急いで門へと向かったのだった。