もふもふになっちゃった私ののんびり生活
約束した日、アイリちゃんは一日のお休みを貰っていた。ヴィクトルさんと一緒なら、と親からの許可も出たので、午前中から街の外へ出た。
「私、家が宿屋でしょ。年中休みなしだから、ブレンの村へ一度だけ行った時くらいしか街の周囲以外に出たことが無いの。だから森に来たのも初めてだったから、ルリィちゃん、今日は連れて来てくれて本当にありがとう!」
どれが薬草か教えて採りながら草原をのんびり歩いていたが、とても楽しそうなアイリちゃんの姿に、森の入り口まで足を延ばしたのだ。
お弁当は途中の何もない草原で食べ、ごろんと寝転がって昼休憩もしたよ。何をしてても友達と一緒だと楽しいね!
「ううん。アイリちゃんが楽しんでくれて良かった。薬草もそれなりに採れたし、遅くなるといけないからそろそろ戻ろうか」
今日は全ての警戒をヴィクトルさんに任せ、私はアイリちゃんと楽しくおしゃべりしながらのんびりと採っていたが、なんだかんだで半日採取をしていたので咳止めの薬草や森の浅い場所で採れる熱さましの薬草もそれなりな量になった。
今日の分は纏めておばあさんに売って、二人で分ける予定だ。アイリちゃんには遠慮されたけど、そのおこずかいで大通りのお店にお菓子を食べに行く約束をしたのだ。
「うん!あーあ。でも、やっぱり街の外は広いね。お客さんから良く王都の話とか聞くけど、街から出ないし全く想像がつかないんだよね。宿屋じゃね……」
「アイリちゃん……」
私が知っているのは、神様が用意してくれた結界の中とその周囲の森、そしてティーズブロウの街。それにこの間ちょっとだけ訪ねたブレンの村だけだ。
だから私の世界はとても小さいと思っていたが、街から出ないで過ごす街の人のことを考えたことなどなかった。
日本では定住して会社に勤めていたが、電車も飛行機もあったし車に乗ればどこでも好きな場所へ行こうと思えば行けたもんね。まあ、行く時間は無かったけど……。
でも、この世界だと、王都までは確か馬車に乗っても二十日以上かかるって誰かが言ってたから……。
それに移動中は魔物に襲われる危険が常につきまとうのだ。誰もがヴィクトルさんのように強い訳ではないし、私みたいに結界を張ったり走って逃げたりできる訳でもない。
護衛を雇っていても、襲撃に遭うのは日常茶飯事だと誰かが言っていた。
「ふふふ。だからルリィちゃんが外から街へ通って来ているって知った時は、最初はとっても驚いたんだよ!だから、いつか……」
そう、アイリちゃんが続けようとした時、唐突にキィンッという何か鋭い音が遮った。