もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「あれ?でも成人は十八歳、だよね?なんで十五歳なの?」
「ええー、だって、成人したら結婚できるんだよ?早い人は成人と同時に結婚するから、その時には安定した職業とある程度のお金がないと生活できないじゃない。だから十歳を過ぎたら弟子入りして自分にあった職業を探して、十五歳で見習いになるんだよ。見習いになったら、給金が出るから、それを貯めて結婚資金にするんだ」
……すごい現実的な事情だった。そ、そうか、成人するってことは結婚して家庭を持つってことなのか……。そういうことは本にはのってなかったし、考えもしなかったや。
「えっ、じゃあもしかしてもしネネちゃんが街で就職したいと思ったら、十五歳までに弟子入りして見習いにしてくれる職場を探さないと無理、ってことになるの?」
「そうだね。職人さんやお店をやりたいと思ったら、今から弟子入りしてもギリギリだね。ただ同じ街や村の人以外と結婚することもあるから、その時は同じ職種のお店で下積みとして雇って貰えればいいけど、大抵女性はお店の売り子、男性なら討伐ギルドとかしかないの」
そっか。工場なんてないから物を作るのは職人だし、事務仕事は勤め先が役所やギルド、それに大きな商会しかないから、上の学校に行くか商会に見習いから下積みが必要なんだね。あとは店をやるなら親の跡を継ぐか師匠から独立するしかないのかな。
そうなると働く場所は限られて、村なら農作業の手伝い、街なら売り子、それと討伐ギルド員くらいしか誰でもやれる仕事がないのかもしれない。
やっぱり生活するのは、どこの世界でも大変だってことだよね……。
「ルリィちゃんはどうするの?おばあさんの薬屋さんを継いで薬師になるの?でも、ルリィちゃんなら街の外へも自由に移動できるし、街で働くこともないのかな」
私は、どうするのか、か……。
今回の木枯らし病のことで、薬師としての役割を考えさせられたが、まだ答えは出ていない。
寿命が最低二百年、というのも全く実感もなかったが、成人の十八歳できっちり就職という意識も無かったのだ。セフィーにも私が成獣になるのは二十歳頃だろうと言われていたし、まだまだ先のつもりだった。
でも、これもいい機会だよね。向き合おうと決めてたのだし、ヴィクトルさんとしっかりと話をして、私の将来のことも考えてみよう。
まだこの世界に生きている実感があまりないのは、神様が掛けてくれた精神作用が残っているからだと思っていたけど、私の意識の問題もあるんだろうな。
「アイリちゃん達はすごいね。私はまだ決められそうにないかな」
「ルリィちゃんは自分の力で選択する余地がたくさんあるんだし、それでもいいんじゃないかな。あっ、でも、ルリィちゃんが将来どこで暮らしていても、私達はずっと友達だからね!」
「うん!アイリちゃんは、私の初めての友達だもん。とっても大切な友達だよ!」
ふふふ、とアイリちゃんと顔を見合わせて笑い合いながら、でも今はこの時間を大切にしたい、とそうも思ったのだった。