もふもふになっちゃった私ののんびり生活
セフィーには。
「セフィー、私、十五歳になったら旅にでるね。やっぱり私、この世界のことをまだあんまり分かってないし。旅をしながらあちこち見て、知ろうと思うの」
「いいのではないですか?せっかくルリィは生まれ変わったのですから、やりたいことをどんどんやった方がいいと思いますよ」
とあっさりした反応だったので。
「ええっ!私、セフィーには反対されると思っていたよ。だって、ヴィクトルさんも一緒なんだよ?」
と、言ったら。
「そうですね。逆にルリィが一人で旅に出る、と言われたら反対しましたよ。もっともっと厳しい修行をしてからじゃなきゃ、一人旅をするには心配ですからね」
と、返された。ま、まあ、そうなんだけどっ!!もう、セフィーはヴィクトルさんの実力は信用しているのに、当たりだけは強いんだからっ!
「ああ、ルリィ。そこの樹の根元をちょっと掘って貰ってもいいですか?そう、その木の根の下です」
ん?と思いつつ、前にもなんか同じようなことがあったような、という予感と共にセフィーに言われた場所を掘ってみると、翡翠のような石が出て来た。
「これ?セフィー」
「そうです、それです。それを、木の枝のネックレスに付け加えて下さいね」
「……そうしたら、どうなるの?」
ニッコリと微笑んだセフィーの笑顔はとっても黒くて、思わず脱兎のごとく逃げ出したい気持ちを抑えながら恐る恐る聞いてみると。
「フフフフ。実体化するには、どうやってもあと十年以上はかかりそうなので、諦めて長年精霊樹の根元に埋まっていたその石に、力を込めました。それがあれば、この大陸のどこにいても、ルリィの様子が分かるようになります!念話が通じる距離も伸びますから、一言くらいならルリィの危機には警告もできますよ!」
と、そう言った笑顔は、夜に思い出したら寝られなくなりそうな笑顔だった。しかもその警告は外敵ではなく、ヴィクトルさんに向けられている気が……。
ああ、セフィーも一緒に行くつもりだったから、旅に出るのにも反対しなかったのか。そう思っていたら。
「それに、当然二十歳になる前に戻って来ますよね?成獣になったお祝いは、ここで私として下さいね?」
「う、うん!私の家がここだってことは、旅に出ても変わらないよ!」
うふふ、と笑いつつ、一緒に旅に出るのは護衛として認めますが、成獣してルリィが番を認識できるようになった時、番として認めるかどうかはまた別の問題ですからね。と呟いていたセフィーの声は、聞こえないったら聞こえないのだ!そう、精霊樹の精なのに、澱んだ黒いオーラを発しているような顔をしていたのも、見てないのだ。うん、見なかった!
翡翠のような石は、ミサンガで包んでペンダントトップのように木の枝の更に先につけた。それによって街でも以前に増してセフィーが念話して来ることになったけど、それもいい思い出だ。
まあ、ヴィクトルさんにネックレスを見せて、セフィーと繋がっていていつでもこの枝を通して私を見守ってくれているんです、と紹介したら、ヴィクトルさんはネックレスを見た瞬間ピンと背筋を伸ばして恭しく跪き、絶対にルリィの意に沿わないことはしないし、命を懸けて守り抜く、と誓った時は、これが正しく野生の本能か、と納得した。うん、私にはないね。