もふもふになっちゃった私ののんびり生活
なのでそれ以降は境界とは逆に、この結界の中心部を探して奥へと探索へ向かっていた。
今はずっとお世話になっている大木の根の穴の寝床を出て、移動している最中だ。
次の寝床の目星もつけている。今までは夜には寝床に戻るのでどうやっても辿り着かなかったが、遠くからでも見えた程に森の木の上に一本だけ突き出た大木を見つけていたのだ。
だからとりあえずの目的地はその大木の根元だ。
とことことあちこち見回してはくんくんと匂いを嗅ぎながら歩き、途中でぽかぽか陽気に当てられて、近くに落ちていた木の実を食べると昼寝する。そして昼寝から目が覚めると、今度はヒラヒラ舞う蝶や蜂を追いかけてピョンピョン跳ねながら歩く。
思えば一歩を踏み出しただけで転がっていた頃から比べると、私も四つ足生活に大分慣れたものだ。速くはないけど走れるし、こうして飛び上がってもあんまり転がらなくなったしね!
フンフンフーンと歩いて、途中で見つけた食べられるキノコを食べて休憩。そしてまた暗くなるまで歩いても、今日もまだ大木にはたどり着かなかった。
暗くなる頃に地面近くに空いていた木の洞を見つけたので、そこで今晩は寝ることにした。
その夜、最近見る間隔が空いていたのに、久しぶりに前世の社畜時代の夢を見た。
どれだけ必死で仕事をやっても、常に怒り顔の上司に次々と仕事を押し付けられて。どんどん、どんどん生気を抜かれながら、それでも毎日早朝に起きては会社に通った自分。思い出してみても、食事も満足にしていなかったし最後の方はかなりやつれて幽鬼のようだった。
真夜中、夢の中で地鳴りたてるような上司の怒鳴り声に追い立てられて、うなされてうわごとを漏らした時。ふっと優しい気配に包まれた気がした。
そのまま私はふう、と一つ大きく寝息を漏らすと、そのまま今度は朝までぐっすりと安らかな眠りについたのだった。