もふもふになっちゃった私ののんびり生活
 翌日はあまり寄り道することなく、真っすぐにドンドン大木の方へ、方へと脚を進めた。すると、普段はほとんど感じない小動物の気配をふいに感知した。

 んん?この気配は……木の上から?

 たまに感じる鳥の気配ではなく、木の枝の上を走り回る気配。
 わくわくドキドキと高鳴る鼓動のまま、じっと気配のある木の上を注視してみると。

 あっ、見つけたっ!!リスに似てる!うわあ、かわいいっ!もふもふしてみたいなぁ。

 出そうになる鳴き声を必死で堪えて息を殺し、木の上を行き交う二匹のリスに似た動物の姿を目で追う。

 もふもふとした生き物を見るのは鼠とばったり行き会わせた以来のことで、気づくと尻尾は弾む気分のままにブンブン振られ、見上げ過ぎた身体は大分傾いていた。
 そうしてついに身体の傾きが限界に達し、振っていた尻尾でも身体を支えきれずにコテンと転がると、その気配に気づいたリスたちはあっという間にどこかえと消えて行ってしまった。

 あっ、行っちゃった。いつか、もふもふさせてくれるかな……?

 ふう、ともうくせになってしまった、子犬には似合わないため息を一つつくと、気を取り直して大木目指して再び歩き出す。
 途中で昼食には芋を見つけて食べ、少しだけ昼寝してまた元気に歩き出して。そしてとうとう夕闇が迫る頃には、その大木の姿がかなり大きく見える程に近づいていた。

 ……ええっ!あ、あれ、家?なんでこんな処に、家なんて建っているの?あれももしかして神様が用意してくれたの、かな?


 そう、遠くで見た時よりも遥かに巨大だった大木の根元に、小さな小屋のような家がぽつんと建っているのが見えて来たのだった。

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