もふもふになっちゃった私ののんびり生活
 その家を見た瞬間、転がるように夢中で走っていた。

 まあ、いくら夢中になっても運動能力が上がるでもなく、身体が大きくなる訳でもないからほどなくつまずいてコロンコロンと転がった。

 だが、大木と家が木の間に見えた、とは言ってもまだまだ遠く、結局その日も到着する前に体力が尽きたのだった。


 翌朝は久しぶりに朝、鳥の鳴き声で目を覚ました。心なしか力尽きて這いつくばった体勢のまま寝ていたのに、さわやかな目覚めになった気がする。

「キャン!」

 よし、今日こそは!と気合を入れ、朝食を食べた後は全く脇目をふらずに真っすぐに大木とその下の家を目指した。
 どんどん近づくにつれ、遠目にも大きく見えていた大木は更に巨大な木に、そして小屋くらいだと思っていた家はきちんとした一戸建ての家となった。

「キュウーー……」

 どれだけ大きな木なの……。確かに、前の大木の寝床から少し行った場所から見えた割には遠いな、とは思っていたけど。最初は二日あれば着くと思っていたし。

 最近の一日の移動距離は、五キロくらいだと思っている。
 体長が今、三十センチ程なので、今だにすぐにバテるし昼寝も一度は必要なのだ。

 確か猫も犬も一日の内ほとんどを寝て過ごすって聞いたことあったから、それに比べれば私の活動時間は長い、筈だよね……。

 暗くなったらすぐに毎日寝ているので、実は午後五時くらいには毎日寝ていたりもする。まあ、前世では毎日三、四時間睡眠で毎日毎日働いていたんだから、今世では前世の分も寝るのだ!

 とりあえず予想よりもかなり大きかった大木に気圧されながらも、トコトコ歩いて午後の昼寝の後、暗くなる前にはなんとか大木の根元まで辿り着いたのだった。


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