もふもふになっちゃった私ののんびり生活

 やった!これだけ用意がいい神様なら、服はすぐとれる場所へ置いてくれると思ったんだよね。

 よいしょ、と手に取って広げてみると、下着は紐でしばるようになっているかぼちゃパンツだった。
 うんしょ、と座ったまま足を片方ずつ入れて、膝立ちになって引き上げて履いてみる。そして紐を手に、結ぼうとすると。
 手がぷにぷにすぎて思うように動かずに、なんとか結べたが、リボン結びは無理だった。

 ……これ、結んだはいいけど解くのはどうしよう?この手で解けるのかな?

 色々悩んだ結果、頭からすっぽりかぶるタイプのシンプルなワンピースだけ取り出して下に置き、人化を解いて四つ足の状態へ戻るとするりとかぼちゃパンツから抜け出した。
 そうしてさっき用意しておいたワンピースをくわえて引きずりながら扉をくぐり、居間へと戻って行った。

 考えたら洗濯もできないし、成長して身の回りのことを出来るようになるまでは、人としての暮らしはすっぱり諦めよう。
 ただ歩く練習と、手を使う練習は今からしておかないと、成長した時に人の姿になっても思った通りに動かせるようになるのか心配だから、訓練する時用にこのワンピースだけは居間に置いておこう。

 この家の外は雑草だらけだったが、室内は不思議と埃や汚れはなかった。泥のついた足で歩いても、いつの間にかきれいになっている。これも今だけの特典かもしれないが、とてもありがたい。

 とりあえず昼食を食べる為に外へ出ると、果樹以外の物を探そうと家の裏の方へと向かった。
 くんくん匂いを嗅ぎながら食べ物を探して歩いていると、森へ入った処で甘い匂いを見つけた。

 おお、食べたことない果物だ!うん、これはリンゴみたいな味で美味しいっ!……この種を植えたら、家でも食べられるようになるかな?

 あの家の周囲に植えられているのは低木の果樹だけだが、家の裏の畑の脇に植えたらお気に入りの果樹をいつでも食べられる?
 その誘惑に誘われるまま、食べ終えた後に種をくわえて家へ戻り、畑の周りの草が少ない場所を探して種を植えた。

 昼食後にいつもの昼寝をしないでそんなことをしていたからか、家に戻ると疲れてその日は夜まで寝てしまったのだった。

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