もふもふになっちゃった私ののんびり生活
 神様が私の為に用意してくれた家に着いて、人化できるようになってからも私の生活はそれ程変わっていない。人化するのは歩く訓練の時だけで、ほぼもふもふ姿のまま過ごしている。

 家があっても使っているのは居間に追加で用意してもらったペット用のベッドと、人化した時に歩く練習する時に使っているソファとテーブルくらいだ。
 食べ物は相変わらず庭の果樹の果実を食べたり、森へ行っては探索がてら様々な果実や木の実、野草や山菜などを食べている。

 そんなこんなで毎日のんびりした日々を送り、一年が過ぎた。


「よいちょ、よいちょ、っと!やった!」

 神様からの紙に書いてあったように私の成長はとてもゆっくりで、転生して二年経った今、やっと体長が三十センチを越えた。人化すると体型は今は三歳未満の幼児、といったところだ。

 歩けるようにはなったがまだ背が小さいので階段を登れないし、椅子にも高くて座れない。
 でも、毎日少しずつ貯蔵庫にあった木箱を運び、今日やっと自室の机の前の椅子によじ登ることに成功した。

 机の上に文字の学習用らしき本が置かれていたのが見えたので、早く椅子に座れるようになりたかったのだ。
 文字が読めるようになれば、神様が用意してくれたシルビィーのことについての本が読める。そうすれば自分に何が出来るのか知れるし、本棚にある他の本も読めるからだ。

 自分の種族の特性などが分かれば早く魔法が使えるようになるかもしれないし、そうすればお風呂に入れるし、温かい料理も食べられるかもしれないよね!

 そう、やはりこうして家があり、耳も尻尾もあるけど人化ができるようになると色々と便利な暮らしが恋しくなって来てしまったのだ。

 まだ人の社会の中に入る気力は全く沸かないが、とりあえず本でこの世界のことを学ぼうという気持ちにはなっていた。魔法を自由に使いたい!ということもあるのだが。

「えーと、あ!あいうえお順になっちぇる!かみしゃま、!ありがちょう!」

 言葉は話せるようにして貰ったのだし、のんびり文字を覚えるのも悪くはない、と思っていたが、どこからとりかかろうかとは思っていたのだ。
 言葉は私は日本語を話しているつもりで話しているので、単語などはこの世界での名称と文字、その発音も覚えないと会話での齟齬が出ると睨んでいる。

 もし私が兎だと思って「兎」とか「ラビット」と言った言葉がこの世界での「兎」に該当する単語に自動変換されて発声されているのか?ということだ。

 でも、あいうえおの表があれば、自分の耳で確認することができるよね。本当に痒い所に手が届く気遣いをありがとうございます、神様!

 とりあえずせっかく乗った椅子から降りるのも大変なので、その場で手を合わせて拝んでおいた。 
 
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