もふもふになっちゃった私ののんびり生活
本を読み終わるのに結局三か月以上かかったので、私ももう少しで三歳だ。
本を読みつつ人化するのを繰り返していたからか、いつの間にか魔法を使えるようになっていた。
そして今日は、楽しみにしていた初めてのお風呂の日だ!!
少しずつ背が伸び、やっとお湯を沸かす魔道具に手が届くようになったのだ。
「よーし、はいりゅぞーーっ!!」
お風呂場で人化し、お風呂に設置されている二つの魔石に両手を乗せて魔力を注ぐ。すると注ぎ口からお湯が浴槽にドバーっと出てきた。
魔石とは、その特性の濃い自然の中に長年眠っていた石が魔石へと変化した物だ。
火を出す魔石なら火山にあった石。風の力を秘めた石は、風の吹きすさぶ谷や崖の石、といった具合だ。
魔石は、魔石の力をどのように使うかを誘導する魔法陣を組み込んだ魔道具として使う。魔道具を使う時は、魔石に直接魔力を注ぐのだ。
お湯が手が届くところまで溜まったらお湯を出すのを止め、背伸びしながら桶を浴槽に沈めた。
「きゃあっ!」
桶にお湯を汲み、よいしょ、と持ち上げようとして持ち上がらず、背伸びしていた足が地面から浮き、浴槽の中へ頭から落ちてしまいそうになってしまった。
とっさに何とか桶から手を放し、手で渕を掴んでなんとか体勢を整えて足を地面につけた。
「ふうーー……あ、危なかっちゃ……」
今では人化すると四歳くらいの外見にはなったが、まだまだ小さいのだ。
「あっ!そうだ、魔法をつゅかえばいいんじゃない?」
今度は背伸びせずに浴槽に指先を入れて魔力をお湯に流し、お湯を水球にして浮かすイメージをする。すると水面がゆっくりと盛り上がり、水球が浮かんだ。
よし!このお湯玉を風も使って動かして盥に入れれば!
バッシャーーンッ!
盥の上で水球を保持する魔力を解くと、盥に半分近くお湯が溜まった。
「やっちゃぁ!あと、もう一回!」
あっという間に盥にお湯がいっぱいになり、いそいそと桶でお湯を汲んで頭からかぶり、森にあったむくろじのような泡の出る木の実を潰して体を布で洗う。
いつの間にか汚れは消えているから体はきれいなのだが、お風呂に入るにはやっぱり洗わないと気持ちが悪い。
頭もなんとか洗ってさっぱりすると、少なくなったお湯をもう一度浴槽から水球で足し、今度こそ盥に足を入れて体を沈めた。さすがに盥なので足を伸ばせないがそこは仕方がない。
「はああぁーーーーーー……。気持ちいいーーーー。やっぱりお風呂は最高だね!」
この後念願のお風呂をゆっくりと堪能したのだった。
魔法を使えばもっと前に入れたんじゃない?とか、そういう突っ込みはしちゃダメなのだ!