もふもふになっちゃった私ののんびり生活
 精霊樹の精が生まれてから、毎日の生活が楽しくなった。
 ただのんびりと生活できればいい、と思っていたのが、この世界を楽しもうと精力的に色々と取り組んでいる。


 精霊樹の精はずっと一緒にいられる訳ではないが、毎日会話をしていた。
 話題はこの森のことや、人の暮らしや国のことなど様々なことだ。

 精霊樹はこの場所に何百年、或いは何千年と存在しつつ世界に魔力を生み出しながらその魔力によって世界のことを知覚していたそうだ。なので大抵のことは何でも知っていた。
 そうして毎日少しずつ会話できる時間も長くなり、一年が経った今では半日顕現していられるようになっていた。


「じゃあ、セフィー。この森から一番近い場所にあるティーズブロウっていう街は、結構大きな街なんだね」
 
 何て呼べばいいか聞いてみたところ、生まれた時に精霊樹から真名を貰ったそうで、呼び名はセフィーだ。

 最初はその真名を教えてくれようとしたのだが、私が慌てて断った。
 精霊と真名を交わすと、繋がりができて精霊は力の範囲内なら相手の場所や状況が分かるし、会話を届けることが可能になるのだそうだ。

 魔獣の契約は、念話ができない種族でも意思疎通ができるようにする手段だが、念話は魔力で相手と繋げて直接言葉を送るという方法で、魔力が多い中級と上級の中の一部の種族が使える。
 私も念話を覚えたので、どちらの姿でもセフィーと会話することができるようになった。

「この森には魔物が多いので、魔物を食い止める為の防衛が必要なのです。だから街壁がしっかりとある堅牢な街なのでそれなりに規模は大きいです」
「ああ、そっか……。魔物、怖いもんね」

 今でも最初に見た、魔物の戦闘を思い出すと震えてしまう。魔法が使えるようになった今でも、私では立ち向かえるとは思えない。

「はい。魔物は生物を襲うのが本能ですから。理屈は通りません。それでも気配を消せば襲われることはありませんので訓練を頑張りましょう」
「うん、よろしくお願いします!でも、もうちょっとだけ街のことを教えてね」

 セフィーには種族特性も含めて様々なことを教えて貰っている。セフィーは木の精なので、気配を消すことへの助言が的を得ていて、とても分かりやすい。
 お陰で気配を殺すことの感覚がなんとなく分かってきた処だ。

「森に近い街ですから、人化して魔獣も街で暮らしていますよ」
「へえ!人化して人の街で暮らしている人もいるのね!」
「ええ。契約していて、という者もいますが、自分の意思で街で暮らす者もいます。上級の魔獣の中には、かなり永い時を生きる種族もいますから」

 そういう種族の人が、退屈になると人の街で暮らし出すことが多いらしい。
 上級の魔獣の中には、所謂ドラゴンなども含まれている。属性により身体の特徴も異なり、種族としての名前がそれぞれあるが総称はここでもドラゴンだ。
 ドラゴンは何千年も生きるそうだ。

 私も前世の分を含めると十分に生きている気がしたが何千年とか聞いてしまうと気が遠くなる。
 因みにシルビィーの寿命は最低二百年から三百年、だそうだ。森の奥深くから出ないし、ほぼ人前に姿を現さない為、実際の処は分からないそうだが。

 これに関しては神様が用意してくれた本にもはっきりとは書かれていなかったし、セフィーに聞いても答えてはくれなかった。
 まあ、今の私には想像もできないし、とりあえずは今のことだ。先のことは先に考えればいいだろう。

 でも。街で暮らしている魔獣の人がいるのなら、会って話せたらいいかもしれない。

 そう、思ったのだった。
 

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