もふもふになっちゃった私ののんびり生活
うろうろしていると、少し森に入った場所にあった枯れた大きな木のうろを見つけた。そこに潜り込むと、周囲の気配を伺ってから結界を張った。
すぐに人化し、急いで背負っていたカバンを下して服を取り出して着替える。
服は神様が用意してくれた中から、ブラウスにズボン、それに膝までのチュニックに外套にローブだ。靴も短い編み上げのブーツを履く。
最後に髪の毛をとかしてからカバンを肩に掛けると、自分の恰好を見下ろしてチェックする。
よしっ。大丈夫だよね。尻尾もブラッシングしたいけど、そこは我慢。とりあえず道を街まで歩いて行ってみよう。
キョロキョロと結界を張ったまま周囲を見回し、気配を探ってから結界を消す。気配を消すのは不審なので、そのまま森を出て道を目指した。
「おっ、お嬢ちゃん。こんな場所を一人で大丈夫か?魔物も出るから気をつけるんだぞ」
「あ、ありがとうございます」
道をポテポテ尻尾を揺らして周囲を見ながら歩いていると、森から魔物を狩って出て来た人達に追い越されながら声を掛けられるようになった。
思わずビクッとしながら言葉を返したが、子供だからか不審には思われなかったようだ。
森の傍の道を子供が一人で歩いているのを不思議がられたが、そこは「お使いに来た」とごまかして笑った。
ううう。結構話し掛けられるものなんだね。でももっふもふな人も多くて、ドキドキしちゃうよ。あああ、もふもふしたい!抱き着かないように押さえるのがこんなに大変だなんて!
私と同じように耳と尻尾がある人や、人の耳の位置に獣の耳があり尻尾がない人、顔が獣で身体は人、という人もいた。あとは耳が尖っているエルフの人や、ずんぐりしているドワーフらしき人など、ここで行き会った人だけでもかなり様々な人種の人がいた。
神様の手紙に書いてあった通り、本当に多種多様の人種がいる世界のようだ。
混血の人も多いんだろうけど、身長が高い人が多いな……。なんか、見上げてもまだ遠いし。だから尚更小さな子供って見られているのかな。
ドワーフらしき人など小さめの人もいたが、大抵の男性はほぼニメートル近い身長の人が多かった。女性も戦闘に携わる人たちだからか身長も高く、大柄な人も多い。
皆掛けてくれる口調が凄く優しいし。街へ着く前にきちんと言葉が通じることが分かったのは良かったけど、一緒に、と言ってくれる人を断るのが結構大変だし。
小さい子どもが一人、ということもあるのだろうが、きれいな尻尾ね、と何度も声をかけられたから銀の髪に大きな耳とふっさふさな長い尻尾を持つ私は目立つのかもしれない。
歳とともに伸びた髪は背中の中程まであり、獣姿もすっかり長毛になった。人の姿で髪をとかすと獣姿の毛並みも整うので、絶対に切れないのだ!
獣姿もふわっふわのもっふもふだし、銀の毛並みは艶々だから目立つと思うんだよね。自分でもふもふできないのが、本当に残念!
今がお昼すぎだから、今日はとりあえず街の大通りで少し買い物したらすぐに帰ろう。
やっと見えて来た街の外壁を見ながらそう決意したのだった。