もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「ほお。キレイに採っているね。……キリナ草が十本一束で小銅貨二枚、ムラン草が十本一束小銅貨一枚だから、合計で小銅貨六枚だね」
「ありがとうございます!……また、持って来てもいいですか?たまに街へ来るんですが」
カウンターに置かれたお金を受け取りカバンへ入れながら聞いてみる。
恐らくこの値段は正当なものだ。しかも、多分上乗せもしてくれているだろう。
だって、これだけで入街税の三回分だもんね。ライルさんと調味料のお店の女将さんに感謝だね。こんないい薬屋を見つけられるなんて。
「ああ。きちんと採った薬草なら助かるよ。……なあお前さん、本当は売りたい物はそれだけじゃあ、ないんじゃないのかい?」
「えっ!なっ、なんで……」
「薬草の処理が出来ているからね。薬草を採るだけならこれだけきっちりと処理はできないよ」
確かについいつもの癖で、薬草を採取した後に使えない葉を取り、鮮度が落ちないように処理をしていた。
薬草は生で使ったり乾燥させて使ったりするが、採った時は効能を保つように切り口を魔力で覆うのだ。その魔力も草木に適した魔力となる。
私はセフィーに徹底的に教え込まれたけど、調合しない人はそういうことは知らないのだろう。
「あの、薬を少しだけ持ってきたんです。見て貰えますか?」
頷いてくれたので、持って来た薬を取り出してカウンターへ並べる。
うう。緊張する。本の通りに調合したつもりだけど、習った訳じゃないし……。セフィーも調合の指導までは無理だしね。試しに使ってみた時は効果はあったけど、プロの目から見たらどうだろう……。
薬を手に取って、効果を確認しているおばあさんをドキドキしながら見ていると。
「フン。最低限の効果はあるようだから、安くなら店に並べてやってもいいよ。街の人がちょっとした時に使うなら、これで十分だ。そうだね。全部で大銅貨三枚だ」
「あ、ありがとうございます!あの、容器を買うことは出来ますか?」
やった!安くでも、買ってくれる人がいるならこれでお金を稼ぐ手段になる!
「本当は道具屋へ行け、っていうんだがね。どうせお前さんが持ち運べる量はたいしたことないだろうからうちのを譲ってあげるよ」
「いいんですか!ありがとうございます!」
フン、と鼻をならしたおばあさんだが、今はもう全く怖くなんてなかった。
それから容器を譲って貰い、笑顔でまた来ると約束して店を出たのだった。
おばあさんの薬屋を出ると、先ほどの調味料を買った通りへ向かった。
浮き立つ心のまま弾む足取りで人にぶつからないように一つ通りを戻り、様々な食材が並んだ露店を見て回る。
あっ、畑で作っているポルは一個小鉄貨三枚、ラーフが小鉄貨五枚か。
この世界の貨幣は世界共通で、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、神銀貨があり、それぞれ大小があり十枚で上の貨幣になる。
見ていると野菜は安いが果物は高い物が多かった。パンは両手の大きさの丸いフランスパンのようなパンが一個大鉄貨七枚で、黒パンは、同じ大きさで大鉄貨四枚だ。
そして肉の串焼きは、私の拳程の大きさの肉が二つついていて大鉄貨六枚だった。