もふもふになっちゃった私ののんびり生活

『待ってくれ!ルリィ、だな。まだルリィが幼獣で番が分からないなら、俺のことを番だと思わなくてもいい。それにこの先に精霊樹が張っている結界があることは気づいているし、君にとって安全な場所だろうから、それはいい。でも、もしまた街へ行くのなら、その時は俺に護衛をさせて貰えないか?』

 へっ?番だ!とごり押しされなくてそれは良かったけど、でも、今、聞き捨てならないことを言ったよね。えっ、この人、この奥に精霊樹があることを知っていたの!しかも、結界を精霊樹が張っているって、何で断定しているのっ!!

『俺は百歳を越えているからな。昔、大陸中をくまなく探索したからこの森の奥に精霊樹があることは知っていたし、ここが今結界に覆われているのは魔力の流れで探知していた。ただその流れが普通とは違うから、精霊樹を中心に特殊な結界が張られているのだろうと予測していたんだ』

 す、鋭い!でも、この森の奥は尋常じゃない程強い魔物がうろつく地帯なのに、そこをくまなく探索したって、どうなの……。

『そ、そうなんですか。でも……』
『この結界の中に住む君には特殊な事情があるんだろう。でもそれを俺は詮索しないと誓う。お互いを知って、おいおい説明してくれたらうれしいが、今日あんな出会い方をしてしまった俺のことを信用できないのは当然だ。でも、俺がこの森の魔物相手でも全く問題ない実力を持つことを信じて、君の護衛をすることだけは許して欲しいんだ。君がこの森を移動する能力があっても、俺が心配なんだ。頼む!』

 おおう。断ろうとしたのに先回りされてしまった……。しかも私に事情があるのを察しつつ詮索しない、なんて。

『き、今日は街の様子を見に行っただけなので。街にはそれ程行く用事はありませんし』
『じゃ、じゃあ、毎日この場所で待っていていいか?お願いだ、街へ行く時に行き帰りの時だけでいいから俺と一緒に過ごす時間をくれないか』

 う、うわーーーー……。ス、ストーカー?ストーカーなの、この人!ど、どうしよう、セフィーっ!!

『じゃ、じゃあ、次は十日後!十日後の陽が昇る頃にここで待ち合わせで!毎日なんて来ないで下さい!付きまとうようだったら、二度と話なんてしませんっ!では!』

 背筋をぞぞぞっと這い上がる寒気を堪えながらそう言い捨てると、そのまま全速力で結界の中へと一目散に駆け込んだのだった。

< 68 / 124 >

この作品をシェア

pagetop