もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「はいこれ!これを肌身離さず持ち歩けるように急いで加工して下さいね!」

 昨日は疲れ果てて一言だけセフィーに挨拶して家に戻り、そのまま寝てしまった。
 今朝は空腹に起き出して、朝風呂をして朝ご飯をしっかり食べると、恐る恐る精霊樹のセフィーの元へと来たのだが。

 待っていたのは笑顔は笑顔でも、背筋どころか尻尾までピーンと伸びてしまう笑顔で渡されたのは葉っぱつきの木の枝だった。

「こ、これは……?」
「本体の新芽です。この枝なら何百年でも持ちますからね!そうですね、ネックレスがいいですね!」

 セフィーが用意した枝を見てみると、新芽だという枝は私の人差し指程の長さで、先端に小さな葉がついていた。

「じゃあ、この枝を組み込んで糸を編んでネックレスにするね」

 手芸は得意じゃなかったが、学生時代にミサンガは作ったことがある。

「手編みですね!ならさっさと作ってしまいましょう!」
「……これを私が身に着けていると、もしかしてセフィーの感度が上がる、とか?」

「あの街なら感知して木を操るくらいなら問題ありませんが、言葉は単語くらいしか距離があると伝えられないのは確かです。でもそれがあれば直接その場で干渉できるようになりますからね。だから十日後までには絶対に完成させましょうね!」

 ああ、やっぱり!この木はセフィーの媒体だよね!それに……。

「……ヴィクトルさんと十日後に待ち合わせしたの、セフィーは怒っているの?」

 私から関わった訳でもないし、精一杯逃げたけど、結局逃げきれずに約束までしてしまったから。

「……私では、魔獣のことは知識でしか教えられませんからね。腹は立ちますが護衛としての腕はあるのは確かです。ルリィが結界から初めて出た時からずーっと結界の周囲をうろうろと嗅ぎまわっていたので、出会うのは諦めてはいたのですが」

 昨日はいつもならルリィは森の奥の方に行かせる日だったから行き会わないと思ったのに、とブツブツと呟いた。

 ええっ!セフィー、ヴィクトルさんが結界の周囲にいたのを知っていたの!しかも結界を最初に出た時って、かなり前だよね?その時からヴィクトルさんが私の番だってことも知ってて監視していたってこと!!そ、そういえば前も嗅ぎまわっているとかどうとかブツブツ呟いていたことがあったような?

 えーーーーっ!!っとあまりの驚きにそのまましばらくフリーズしてしまった。

「……セフィーは、ヴィクトルさんが私の番ってところはいいの?」

 やっと気を取り直してそれだけ聞いてみると。それはそれはニッコリと笑って。

「ルリィは幼獣で番の匂いに気づくのにはまだ十年は先なので、その間に魔獣や魔物のことなどを聞くだけ聞いて、成獣する前に捨てたらいいんですよ。付きまとって来る変態ですし、ルリィは番だとか気にする必要はないですからね?」

 と。セフィーの笑顔を見て、私には耳を伏せ、尻尾を膨らませて震えながら「は、はいっ!!」と答えることしかできなかった。


 それから大急ぎでセフィーの注文を聞きながら枝を入れてミサンガを編んだ。

 先端に新芽が出るように細い枝を結び目の間を通して編み込んだら先端を結び、余った糸を三つ編みしてから輪にした革ひもに結び付けた。色は白と緑と濃い緑でグラデーションだ。

 夕陽が沈み始める頃に無事にネックレスは完成し、満足そうなセフィーを見てホッとしたのはいうまでもない。

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