もふもふになっちゃった私ののんびり生活
 次の日からはいつものように、午前中には畑の世話をしてからセフィーの処へ行き、家へ戻ると調合して過ごした。
 そして少しだけ薬草畑を増やし、おばあさんの薬屋へ売る用に森で薬草を集めて植え替えた。

 街で買って来た卵は、干したキノコで出汁をとり、ウルで味つけしてだし巻き卵にした。久しぶりに食べたその味に、無性にお米が食べたくなって涙が出そうになった。


 ブツブツ言いながらセフィーが教えてくれたことと、本棚から探した本を読んで番について分かったことは。

 番とは魔力がお互いにとって相性がとてもいい相手で、相手は一人だとは限らないが番が見つかることはとても稀で、番相手ではなくても子供は作れること。
 ただ本能的に番は求めてやまない相手で、中には番相手でないと番わない種族もいるくらい番は大切な相手だそうだ。

 あと混血の方も、どんな子が生まれるのかは生まれてみないと分からないが、人も魔獣もどんな種族同士でも子供はできるそうで、この世界はそういうところは緩いようだ。
 混血しすぎて生きてみないと自分の寿命も分からない人も多いらしく、それを考えれば魔獣だって何でも有りなのかもね。

 だからセフィーも、私のことを番と認識しているヴィクトルさんに私が危害を加えられることはないと認めていた。

 まあ、体格が余りにも違うから、この間のように腕をつかまれただけで私にとっても危害になりうるんだけどね。手を掴まれた箇所も、うっすら赤くなっていたし。その対策として「絶対必要以上に近寄らないように!」とのセフィーとのお言葉だ。

 私は番という本能的な感覚が成獣しても感じられるか自信もないし、そこは賛成だから積極的に会うつもりはない。ただ魔獣についてなど知りたいので、セフィーが言ったようにヴィクトルさんが希望している街に行く時の往復の時に教えて貰うつもりだ。

 ……あのもふもふな毛並みはとっても魅力的だけど、そこは我慢、だ。私のことを番、つまり異性として見ている相手の全身を撫でまわす、と考えたら痴女どころの騒ぎじゃないよね!


「いいですか。ネックレスは絶対に外さないで下さいね。それにあの人に護衛と教えを頼むことを、気にする必要は全くありませんよ!それこそ会って話すだけで十分です!もし抱き寄せたり、匂いを嗅いだりなどの変態行為をしたら、容赦なく魔法を打ち込んで駆け戻って来て下さい。もう二度と会わせませんから!」

 と息巻くセフィーの声を背に、あっという間に約束した十日後の朝、背に着替えと薬、それに薬草の束を入れたカバンを背負ってまだ暗い夜明け前に精霊樹の元を出発した。
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