もふもふになっちゃった私ののんびり生活
そうして着替えの為に大木の近くまで来た処で、結界を張ると外から見えないとはいえ、人化すれば裸になるのでやはり気になってしまった。
『ヴィクトルさん。私はそこの木のうろで人化して来ます。結界を張ると私の姿が見えなくなりますが、ここから絶対に動かないで下さいね?』
ヴィクトルさんと足を止めたのは、五メートル離れた場所だが光学迷彩が無ければあと二十メートルは離れただろう。
じっと見つめる私の視線に不信感が見て取れたのか、ヴィクトルさんはしゃがんで視線を合わせて頷いた。
「分かった。絶対ここから動かない。そちらの方も見ないから、安心してくれ。……俺に信用がないのは分かっているから、約束はきちんと守るし君には手も触れない。だから俺のことをそんなに不審そうな目で見ないでくれ」
そうは言われても、そこは仕方ないと思うのだ。ヴィクトルさんが護衛に足る実力があるのは理解したが、それとこれとは別なのだ。
そう考えていると、頭の中でセフィーが大きく頷いた。
『……それはこれからの行いで示して下さい。では』
後ろの気配を探りながら大木のうろに入ると、念入りに光学迷彩を意識して結界を張った。
セフィーのお墨付きを貰っているし、魔物の目の前で何度も張って効果は確信してはいても、どうしてかヴィクトルさんの視線は気になってしまう。
私は意識したくなんてないのに、やっぱり番とか言われたら気にしてしまうよね……。
とりあえず外から見えない場所で人化すると大急ぎで着替えた。
セフィーの枝を編み込んだネックレスは、獣姿でも人化してもそのまま首にあるのでネックレスの位置を直し、髪をさっととかして身支度を整えると結界を解いて外へ出た。
ヴィクトルさんを確認すると、着替える前と位置も姿勢も変わってはいなかった。その姿をじっと見ていると、振り返ったヴィクトルさんと視線があった。
「……獣姿もきれいで可愛いが、人の姿もやっぱり可愛いな。さあ、街まで行こうか」
……なんだろう、今……いや、聞こえなかった、聞こえなかったから!
冷静に、冷静に、と頭にセフィーの顔を思い浮かべ、ヴィクトルさんに背負われた袋を見ながらしっかりと深呼吸し、平静を取り戻すと頷いた。
あの背負い袋には、行きに倒した魔物が入っているのだ。血が滲んだりはしていないが、しっかりと大きく膨らんでいる。
「……気づいていると思いますが、私は少し特殊なんです。だから魔獣のことを余り知らないので、良かったら歩きながら教えて下さい」
何も話さないと気まずいし、どうせ聞く予定だったから、丁度いいよね。
「ああ、何でも聞いてくれ。俺が知っていることは何でも話そう」
嬉しそうに笑うヴィクトルさんの姿に、無意識に顔を逸らしながら隣へ並んだ。
森から出て、道へ出る頃には隣を歩く大きな姿を気にしなくなっていた。
私は顔を見て話そうにも、どうせ首が痛くなるのだけだから。と、そのまま前を向いたままだったが、斜め上から注がれる視線は精神に悪いので無視することにした。