もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「この森に暮らす種族もいるんですね」
「ああ、それ程奥に行かない場所に小さな種族が群れで暮らしている。他にもいるが、ルリィが暮らす結界の更に奥にも、確かドラゴン種のどの種族だかは忘れたが暮らしていた筈だ」
ド、ドラゴン種があの森の奥にっ!そんなこと、セフィーにも聞いていないんだけど!!
と驚いてみたが、落ち着いて考えればそこまで奥に私が行くことはないから別に関係はない。
「その小さな種族は、どんな魔獣なんですか?」
「確か、胴が長いが体長はルリィの半分くらいだったと思うが……。ルリィなら警戒されずに会話できるかもしれない。会いたいのか?」
「そうですね……。他の種族の方にも会ってみたいとは思ってますが」
ふおおっ!!も、もしかしてイタチっぽい魔獣なのかな!そ、それなら契約したらもふもふできるかも?でも、群れで暮らす種族なら無理かな……。
内心では想像したもふもふにニヤニヤしていたが、普通に取り繕った顔で応えたつもりだった。
それでも上から見下ろすヴィクトルの視線からは、ルリィの口元が上がってうれしそうな様子が見てとれ、少しだけ眉を顰めていたことは当然気づく筈もなく。
「機会があれば、街にも俺以外に人化して暮らしている者がいるから紹介しよう」
「本当ですか!……でも、とりあえずもっと魔獣のことを教えて下さい」
小型の魔獣や街で人化して暮らしている人も気になったが、会う前にもっと魔獣のことを知らないと!とそれから街までの約一時間、森での暮らしぶりなどを聞きながら歩いた。
街へ着くと、最初におばあさんの薬師の店に向かった。
街に入る際、門番さんにヴィクトルさんと並んでいる姿をチラチラ見られたが、止められることは無かった。
ヴィクトルさんを見ると、「警備の兵にはきちんと説明した上で解放して貰った」から大丈夫だと言われたけど、心配そうに見て来る兵の人にはそっと頭を下げてみた。
いや、私も受け入れた訳ではないから!とりあえず、だから!
「おばあさん、また来ました!今回も薬草と薬、見て下さい!」
薬屋の扉を入ると、この前と同じようにカウンターの前に腰かけるおばあさんの姿があった。
パタパタと駆け寄ってカバンから家の畑で育てた薬草と、その薬草から作った薬を並べる。
「ああ、また来たのかい。どれ。……この間よりも森の奥の薬草だね?フン、処理もいいから高く買い取るよ。薬はこの前とあまり変わらないね」
今回は畑に植え替えた薬草を持って来た。家の周囲で良く見かける薬草だが、森の浅い場所には生えない薬草なのだ。
でもその効能の高い薬草を使っても、私が調合すると弱い効果しかない薬になっちゃうんだよね……。やっぱりおばあさんにいつかは師事したいな。
「薬草と薬で全部で小銀貨二枚と大銅貨六枚だよ。それでいいなら買い取るよ」
「はい、お願いします!あの、今回も容器をお願いします。あと、薬草で高い物や数が少ない物はありますか?見つけたら持って来ます」
またかい、と言いながらも譲ってくれた容器をカバンにしまい、ドキドキしながら返事を待っていると。