もふもふになっちゃった私ののんびり生活
6 もふもふ少女、薬師に弟子入りする
「ありがとうございました!また来てくださいね!」
「ありがとう、ルリィちゃん。また来るよ!」
手を振って客を見送ると、カウンターの奥にある調合室へと戻りながら、チラリと店の隅を見る。
私の視線に気づいたのか、顔を上げたヴィクトルさんにため息をつきながらもう何度も繰り返した言葉を告げる。
「今日はもう出かけませんから、ヴィクトルさんは自分のことをして下さい」
「いいや、俺がしたいことは君の傍にいることだから。気にしないでいい。ただここに居させてくれ」
そのもう聞きなれた答えに、やれやれと首を振りながらおばあさんの待つ調合室へと入って行った。
最初にこのティーズブロウの街を訪れてから、もう一年が経つ。それはヴィクトルさんと出会って、一年が経つということだ。
この街へ来る頻度が月に三回、四回、と増え、五日に一度来るようになった頃にはこの街の商店を粗方見て回っていた。
結局お米を見つけられなかったんだよね……。定番の飼料になっているのかと思って、飼料屋も覗いたのに。まあ、この世界に自生していることはセフィーに確認してはいるんだけど。
そうしてちょくちょく顔を出していた薬屋のおばあさんに、家に泊めてあげるから調合の修行を始めるかい?と誘われて私はそれから街へ二泊することになった。
セフィーに言った時は反対されるもんだと思っていたのに、枝を通してずっと見守っているから好きにしたらいい、って言われた時は驚いたな。まあ、家はここなんだから、絶対に帰って来て下さい!って言われたし、私も街に住むつもりは無かったから、今は街へ二泊して戻って家に三泊してまた街へ、の繰り返しの生活だけど。
あのまま精霊樹の結界に包まれ、神様が用意してくれた家でセフィーに見守られながら暮らすのは幸せだが、外の世界を知ってしまうとこれから一生と考えると寂しくなる。
あの家は私が帰る家だということは変わりはないが、外の世界を見て来るのも悪くない、と思えたから。
ねえ、神様。最近ではほとんど悪夢を見て飛び起きることも無くなったし。かなり立ち直ったと思いませんか?
「今日はそろそろ寒くなるから熱さましを作ったら終わりにしようか。夕方に裏の宿の子と会うと言ってなかったかい?」
「あっ、そうだ、アイリちゃんと約束してたんだった!」
そうえばこの前街へ来た時に、四日後と約束したのだった。
アイリちゃんは、このお店の裏にある宿の子供で、私と同じ、十二歳の女の子だ。
父親がドワーフ系、母親が獣人系の混血で、外見的には私と同じくらいの身長の茶色の髪と瞳のかわいい子だ。
薬屋で見習いをするようになって、知り合いがどっと増えた。その中でも同じ年頃の女の子とは友達になった子も何人かいる。
最初は私は魔獣だから、とちょっと引いていたところがあったのだが、人化して街で暮らす魔獣はほぼ獣人みたいなものだと認識されているらしく、相手の方が全く気にしていなかった。
「ありがとう、ルリィちゃん。また来るよ!」
手を振って客を見送ると、カウンターの奥にある調合室へと戻りながら、チラリと店の隅を見る。
私の視線に気づいたのか、顔を上げたヴィクトルさんにため息をつきながらもう何度も繰り返した言葉を告げる。
「今日はもう出かけませんから、ヴィクトルさんは自分のことをして下さい」
「いいや、俺がしたいことは君の傍にいることだから。気にしないでいい。ただここに居させてくれ」
そのもう聞きなれた答えに、やれやれと首を振りながらおばあさんの待つ調合室へと入って行った。
最初にこのティーズブロウの街を訪れてから、もう一年が経つ。それはヴィクトルさんと出会って、一年が経つということだ。
この街へ来る頻度が月に三回、四回、と増え、五日に一度来るようになった頃にはこの街の商店を粗方見て回っていた。
結局お米を見つけられなかったんだよね……。定番の飼料になっているのかと思って、飼料屋も覗いたのに。まあ、この世界に自生していることはセフィーに確認してはいるんだけど。
そうしてちょくちょく顔を出していた薬屋のおばあさんに、家に泊めてあげるから調合の修行を始めるかい?と誘われて私はそれから街へ二泊することになった。
セフィーに言った時は反対されるもんだと思っていたのに、枝を通してずっと見守っているから好きにしたらいい、って言われた時は驚いたな。まあ、家はここなんだから、絶対に帰って来て下さい!って言われたし、私も街に住むつもりは無かったから、今は街へ二泊して戻って家に三泊してまた街へ、の繰り返しの生活だけど。
あのまま精霊樹の結界に包まれ、神様が用意してくれた家でセフィーに見守られながら暮らすのは幸せだが、外の世界を知ってしまうとこれから一生と考えると寂しくなる。
あの家は私が帰る家だということは変わりはないが、外の世界を見て来るのも悪くない、と思えたから。
ねえ、神様。最近ではほとんど悪夢を見て飛び起きることも無くなったし。かなり立ち直ったと思いませんか?
「今日はそろそろ寒くなるから熱さましを作ったら終わりにしようか。夕方に裏の宿の子と会うと言ってなかったかい?」
「あっ、そうだ、アイリちゃんと約束してたんだった!」
そうえばこの前街へ来た時に、四日後と約束したのだった。
アイリちゃんは、このお店の裏にある宿の子供で、私と同じ、十二歳の女の子だ。
父親がドワーフ系、母親が獣人系の混血で、外見的には私と同じくらいの身長の茶色の髪と瞳のかわいい子だ。
薬屋で見習いをするようになって、知り合いがどっと増えた。その中でも同じ年頃の女の子とは友達になった子も何人かいる。
最初は私は魔獣だから、とちょっと引いていたところがあったのだが、人化して街で暮らす魔獣はほぼ獣人みたいなものだと認識されているらしく、相手の方が全く気にしていなかった。