もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「今日こそは、アヤツを引き留めておいてあげるからね」
「うーん。なんか、アイリちゃんも、もう慣れたから気にしないって言ってたのでもういいです。友達と一緒の時は離れていますし」
ヴィクトルさんは相変わらずで、街の行き帰りと、街でも護衛をする、とずっと私の後を付きまとっている。
……いや、なんか人聞きの悪い言い方になったけど、でも、その通りなのだ。何度もついて来なくていいと言っているのに、友達の女の子と一緒に街を歩いていても、見える場所でずっと見守っているのだ。
まあ、それで助かったこともあったんだけどね。
一度ヴィクトルさんをおばあさんが店の外に追い出した隙に、アイリちゃんたち友達と街のすぐ外の草原へ花を摘みに行こうとしたことがあった。
その時、私は会話に夢中でつい警戒がおろそかになっていて、街の外へ出てすぐに攫われそうになったのだ。
セフィーの忠告も無く一瞬茫然としてしまった私を、犯人の手が私に伸びる前にヴィクトルさんが助けてくれたのだ。
家に戻った時にセフィーに聞いてみたら、ヴィクトルさんが近づいていたのが分かっていたから、実力試しに警告しなかったんだって。で、そのセフィーの実力試しをヴィクトルさんは無事に突破して、あっという間に誘拐犯を全員捉えて門番へと引き渡したのだ。
だからヴィクトルさんの護衛を私もそれからは拒否しづらくなって、そのままになっている。今では薬屋でも店の隅で店番をしているくらいだ。
ヴィクトルさんに客が来たと声を掛けられるまでおばあさんに調合を教われるから、まあ、その点でも助かるといえば助かる。
でも、どう考えても時間を無駄にしていると思うんだよね……。だってヴィクトルさんの実力なら、一日でどれだけ稼げるのか。まあ、もう一生遊んで暮らせる分くらいは稼いでいるから心配するな、とか言われたけど、気になるよね。
アイリちゃんに質問されてヴィクトルさんのことを話した時に、討伐ギルドの神銀級なんだって、と言ったらとても驚かれたのだ。討伐ギルドの階級の、上から二番目で実質一番上の階級で街に一人いれば凄いのだと聞いて、私も驚いたのだ。
それからたまに来る客をさばきながらおばあさんと調合を続け、約束があったから出かける、と言ったら当然のように「ついて行く」と言ったヴィクトルさんと二人で待ち合わせ場所へと向かった。
「アイリちゃん、お待たせっ!もしかして、待った?」
「ううん、さっき来たところだよ。ルリィちゃん、会いたかった!」
建物は隣だが、アイリちゃんの家は宿なのでいつでも人が多いから、待ち合わせる時は外で待ち合わせにしている。
「私もだよ、アイリちゃん。今日は十日後の収穫祭用のお守りを買いに教会に行くんだよね?いつもの通りヴィクトルさんが一緒だけどいいかな?」
「うん!ヴィクトルさんはもう慣れたから大丈夫だよ。もっと近くでもいいけど」
「ううん、いいの。さあ、行こう!」