もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「それで今日もやるのか?俺としては無理はしないでいいと思うんだが。魔獣でもニールみたいに草食の種族もいるんだし、気にすることはない」

 ニールさんは街に人化して住んでいる魔獣の人で、工房を営んでいる人だ。草食の種族で、穏やかな人だった。

「いいんです!私は雑食の種族ですし、お肉、美味しく食べているんですから!今日こそ気持ち悪くならないように頑張ります!」

 ここ最近は人の姿のまま森の中程までは行き、浅い場所の魔物は私が魔法を使って倒すことにしている。
 ヴィクトルさんに戦闘と解体を教えて貰っているのだ。

 肉を食べるなら魔物を狩れるようになろう、と決意の元何度も魔物を倒したが、今だに自分の手で生き物を殺すことも血を見るのも苦手なままだ。

 生き物を殺すのに慣れたくはないから、それでいいんだけどね。でも、だからやらない、のは違うと思うから。

 よし!と気合を入れて森へ入り、敢えて魔物が寄って来るように気配を殺さずに歩き出す。

 魔物が全く寄って来なくなるので、ヴィクトルさんには気配を消して貰っている。私だけなら、小動物の魔物でも寄って来るのだが。

 今だに小動物の魔物にさえ舐められている私……。ヴィクトルさんには、私の気配には殺気がないからではないか、と言われたけど確かに殺気を出すのは無理だ。

 なんといったって、私は前世は日本で安全に暮らし、今世でも精霊樹の結界の中でぬくぬく暮らしていた箱入り娘だからね!!

 ヴィクトルさんに教えて貰い攻撃用の魔法を覚え、最近では威力だけなら大型の魔物にも通用するだろうとお墨付きも貰えたのだが、実際に戦闘になったら放つ前に詰め寄られて終わりだろう。

 また気分が落ち込んだが、その気配を察知したのか魔物の気配が近づいて来たのを感じた。
 ガサガサという音とともに茂みから小さな魔物が飛び出して来たと同時に、気配を頼りに一面に風の刃を放つ。

「キキッ!?」

 連なった小さな風の刃がいくつかかすり、血を出しながら逃げようとする魔物を次は空気中の水分を集めて作った水球をぶつけて中に閉じ込める。
 そのまま結界で覆って水球を維持すると、暴れる魔物から出る血で水が染まるにつれて動きは弱まり、そしてそれ程かからずに動かなくなった。
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