もふもふになっちゃった私ののんびり生活
7 もふもふ少女、奔走する
翌日の家へ戻る日の午前中まで、ずっと咳止めの調合を頑張り、しっかりとマギラ草、ゴゴの根、ローブル草の下処理も教わった。
この二日の間は、咳止めの薬を求める客はいなかったが、流行り出したら薬はいくらでも必要になるだろう。
「じゃあ、おばあさん。次は予定通り五日後ね。薬草も頑張って採って来るから!」
「くれぐれも無理しないようにね。他の薬屋にも一報は入れておいたし、私も街の方を見ておくからね」
「はい!」
心配して店から見送ってくれるおばあさんに手を振り、ヴィクトルさんを連れて大分人の少なくなって来た街の中を急いで門へと向かって移動する。
「ルリィ、今日は買い物はいいのか?」
「食材はまだ余裕があるから大丈夫です」
心配そうなヴィクトルさんの声にも私は気に掛ける余裕はなく、門を出ると急いで森へ駆け出した。
どうしてもアイリちゃんの咳が頭から離れなかったのだ。
一目散に森を目指して駆け、森へ着くとすぐに道から外れて人目につかない場所で胸元のセフィーの枝に手を伸ばす。
「セフィー。聞こえてる?木枯らし病の薬に使うゴゴの根の、この森で生えている場所を教えて欲しいの」
枝を身に着けていてもセフィーと会話する為には森まで来る必要があったのだ。
『ルリィ、群生地を示すことはできますが広範囲に渡りますよ』
「とりあえず近くの人が入らない場所からお願い。ねえ、セフィー。ヴィクトルさんに護衛を頼むから、いいでしょう?」
『……夕方までですよ。暗くなったらいくら夜目がきいても、護衛がいても危ないですから戻って来て下さいね』
「うん!ありがとう、セフィー!」
今の状況から私が引かないことが分かっていたのか、思ったよりも簡単に交渉は成立した。
普段はセフィーに頼ることなく自分の足で探しているが、今回は胸騒ぎがするのでそうは言っていられない。
これも野生の直感なのかな?今回は当たらない方がいいけど……。
アイリちゃんの家は宿屋なので毎日人の出入りが途絶えることはなく、一階の食堂ではアイリちゃんも夕食の時間帯まで給仕を手伝っている。
その他にもシーツや洗濯物の洗濯など、どうしても人との接触が多いから、流行ったらかかる危険性はかなり高い。
こまめな浄化や手洗いうがいを奨励したいけど、アイリちゃんは魔力が少なくて一日にそう何度も魔法を使えないって言ってたんだよね。
飲み水くらいは皆魔法で出すが、生活に使う水は魔道具は高価なので街でも井戸だ。アイリちゃんの宿にも裏庭に井戸があるが、ポンプはないので汲み上げるのは重労働なのだ。