もふもふになっちゃった私ののんびり生活
今年木枯らし病が流行する、と確実になれば、感染対策としてマスクくらいはおばあさんに言えば普及させられるかもしれないけど……。手洗いうがいまではすぐには普及しないだろうな。
今はとりあえず、街全体に木枯らし病が蔓延する前に、薬を供給できる体制を作ることが先決だ。
「ヴィクトルさん。すみません、事後承諾になりましたが、これから薬草を採りに行くので、その間護衛をお願いしてもいいですか?あと、明日も時間があったら手伝って貰いたいんですけど……。毎日私に付き合わせることになってしまうから、申し訳ないですが」
結界を張れば魔物に襲われないが、採取に夢中になってしまって結界の維持が途切れてしまう可能性も捨てきれない。だからヴィクトルさんがいてくれれば、魔物を気にせず採取に集中できる。
でも、自分の都合がいい時ばかり利用しようとするなんてやっぱり迷惑だよね。
「いや、やっぱり」
「ルリィに毎日会えるし、いくらでも手伝うから気にしなくていい。それにティーズブロウの街に俺も住んでいるんだから他人事じゃないしな。返事がすぐできなかったのは、ちょっと驚いて……ルリィ、今、誰と話していたんだ?もしかして念話なのか?」
あーー……。そういえば、ヴィクトルさんには何も説明してないんだっけ。
詮索しない、という言葉をいいことに、自分のことを何一つヴィクトルさんには説明していないのだ。
考えてみれば、良くそんな状態で一年近くヴィクトルさんは私の護衛を続けていたよね。そこまでさせる番って……。
「……今念話していたのは、精霊樹とです。この森一帯のことは、何でも知っていますから、薬草の群生地を案内して貰えることになりました」
「精霊樹……。そうか、分かった。俺はルリィを護衛しながらついて行くから、俺のことは気にしなくていい。荷物も持とう」
……一瞬間が空いたのは、本当は色々と聞きたいんだろうな。でも、私が今、答えた以上を詮索しないように、今も飲み込んだ。
「すいません。……もう少しだけ、待っていて下さい。いつかはきちんと説明しますから。では、暗くなるまでに帰らないとならないので行きましょう」
私が成獣になった時に番と感じるかどうかをおいておいても、ヴィクトルさんには事情を説明すべきだとは思ってはいるのだ。どこまで話すかまでは決めてはいないけれど。
貴方が探し求めて見つけた番は、大分普通とは違うんですよ、と告げるのも気が重いけど、元々私に特殊な事情があることは察していたし、スッキリするよね!それでどうするかはヴィクトルさんの選択なんだし。
この世界のことをまだ知らないからと相手と向き合わないで何も言わないでいるのもそろそろ終わりにしないとね。ヴィクトルさんの誠意は、この一年間ずっと見ていたのだから。それに。
この世界は、もう異世界ではなく、私が生きている世界なのだから。私ももうそろそろ向き合うべきなのだ。
そう決意しながら、セフィーが導いてくれた方へと駆け出したのだった。